ぼくは、おどかされる(カツジ猫)
「すごい、あらしがくるってよ。どうする、かつじ」と、
かいぬしはさっきぼくに、おさしみをわけてくれながら、いいました。
どうするかって、いわれてもさあ。
かいぬしは、じぶんがこわいから、ぼくにあんなこというのかなとおもったけど、
そういうひとがらでもなさそうだから、
ただたんに、ぼくをおどかしたいだけなんだろうと、おもいます。
さいきん、ぼくは、かいぬしがごはんをたべるときにすわるいすが、きにいって、
まいにち、そこでねています。
さいしょみたとき、かいぬしは「あっ」といって、かたまって、
「そうきたか。うむ」といっていました。
ぼくは、ろうかのせんたくかごのなかや、くろーぜっとの、まどのまえのもうふのうえや、いろんないすのうえや、べっどのうえや、
いろいろ、きにいった、ねばしょがあって、そのどれかをえらんで、
まいにち、てんてんとしています。
でも、きほんてきに、かいぬしが、ぱそこんでしごとをする、いすと、
ごはんをたべるいすには、すわりませんでした。
だから、かいぬしは、びっくりしたのだとおもいます。
「ねっとでみたけど、かいぬしにあいされてる、しあわせなねこのとくちょうに、
『いえのなかのどこででもねる。
なぜなら、どこでもだいじょうぶとわかっているからである』
というのがあったから、おまえも、それかねえ」といって、
ねているぼくのあたまや、みみをさわって、どこかへいきました。
かいぬしは、ぼくがすぐ、ばしょをかえるとおもってたらしいけど、
ぼくは、きにいったので、そのいすで、それからまいにち、ねました。
かいぬしは、おこらなかったけど、ごはんをたべるときは、
ぼくをそのままにして、いすのはしにおしりだけのせて、たべるようになりました。
そのあと、かいぬしが、べっどでほんとかよんでねているので、
ぼくもいすをおりて、べっどにいくと、かいぬしは「ふふん」とわらって、
「あけわたしたな」といって、ぼくがおりたあとのいすにすわって、
ゆっくり、おちゃをのんだりします。
「そんな、たとえをしてはいけないのだけど、
どこかのくにで、とうぶや、なんぶやあちこちで、せんそうをして、
りょうどをとりあっているみたいだなあ」と、かいぬしはいってるけど、
ぼくには、なんのことかわからないや。
いっかい、「このぷーちんめ」といわれたようなきがするけど。
どこの、ねこのことだろう。
かいぬしは、ぼくをおどかしたあとで、
あらしのじゅんびとかいって、さぼてんのささえを、きょうかしたり、
かってきた、はなのなえをうえたり、
「くちだけで、どうせふらないんだろ」と、そらにむかって、おこりながら、
くらいなかで、みずまきをしたりしていました。
いまのところ、あめもかぜもなくて、
いえのまわりは、しーんとしずかです。
ほんとうに、あらしがくるのかな。
「おまえがいるんじゃ、ひなんもできないし、
このいえで、がんばるしかないね」といいながら、
かいぬしは、いまから、かいちゅうでんとうのでんちを、
あたらしいのに、いれかえるみたいです。