めでたし、めでたし
先日、しばらく家を留守にしていたのだが、その後で、洗濯ネットの一番小さいのが見つからなくなった。
下着や小さいものを入れるのに重宝していたので、気になっていたが、まあその内にどこか思いがけないところから見つかるだろうと、たかをくくっていた。
でも、いつまでも、どこからも出て来ない。こういう時に不安になるのは、そのこと自体は大したことじゃなくても、それにともなう異常事態が何か発生している、そのしるしではないかということだ。
それで、だんだん気になって来ていたら、今日、上の家の、前に灰色猫のグレイスがいた部屋のベッドの上の物干し紐に、他の洗濯物といっしょにかけてあるのを発見した。何度もこの部屋を通ったのに、気づいていない私もすごい。
この部屋は、実は上の家の中では一番日当たりがいい最高の部屋で、そこを猫部屋にしてやっていたから、グレイスが死んだあとは、彼女のいたベッド(これがまた叔母が使っていた、高級ベッドだったのよ)を、きれいにして、客用寝室に使うことにしていた。
留守にする前、洗濯をして、生乾きのを、日当たりのいい、この部屋に干して、そのままにしていたのを忘れていたのだ。迷子のペットが帰ってきたとまでは行かないが、とにかくほっとした。めでたいわ。
それで浮かれたせいでもないけど、その後で風呂に入って、脱衣場の鏡の前で、自分の裸を見ていたら、ちょっと写真に撮ってみたくなって、携帯で数枚自撮りしてしまった。やだもうこんなの、保存しといていいものかしら。
庭の花たちはあいかわらず野放図に咲き乱れている。白いミニバラは、どんどん広がって思わぬところにまで枝が伸びているし、アジサイの株も大きくなって、いくつも花をつけている。以前はなかなか咲かなくて、うちの庭とは相性が悪いのかと思っていたナデシコも、妙に元気に満開だ。
白バラは前につんで花瓶にさしたら、すぐにしおれてしまったので、そのままにしておくことにして、奥庭の真っ赤なバラと、アジサイと、雑草並みにはびこっているハーブをつんで来て、あちこちの花瓶に飾った。今日は久々になじみの喫茶店でケーキを食べ、花屋さんで紫のバラと赤いガーベラを買って、それも飾って、なかなかにいい雰囲気になっている。こんなにハーブを植えたのは、猫が嫌う匂いだからと聞いて、ノラネコ撃退のために植えたのだが、嘘ばっかり、今日も白黒のノラネコが、ハーブのそばで昼寝していた。
オリンピックが強行されそうなのを見ていると、以前にこの町で、女人禁制の島を世界遺産にしてしまったときのことをいやでも思い出すなあ。議論を徹底的に避けて、女人禁制を隠しまくって、ひたすらな確信犯で、「もう今さら後戻りはできない」時点まで、しゃにむに目隠しのまま前進した自治体と、国宝とかの文化財保存の体制がちゃんとできていて、地元での保護体制もあるのに、世界遺産の名前がほしくて、獲得のためにさまざまな無理をしまくる自治体に、おまえは何様だとあきれるぐらい注文つけて、金を使わせて視察や評価をしつづけた国連だかの関連機関の傲慢さと鉄面皮さ。何もかもが、そっくりだ。
内田樹さんとか津田大介さんとか、良心的な行動や発言を常にしていた人たちが、強く反対しつつなお、こぞって「もう、とめられないだろう」みたいなことを言っておられるのにも、こんな人たちまで、これだけの絶望をしてしまうほどの虚しさや絶望感を、ここ十年あまりの政治は作り出してしまったのかと、ただただもう、暗澹とする。