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ものすごく雑談めいたミュージカル「レ・ミゼラブル」感想。

◇昨日は何回目かの博多座での「レ・ミゼラブル」を見て来た。席の加減かキャストの加減か、どの役の人も、ものすごく滑舌がよくて(ミュージカルでも滑舌というのか知らないが)歌詞がはっきり聞き取れて快適だった。

ジャベールは私が最初に見た時の川口さんという人で、この人の端正な歌いくちの「星よ」は、ジャベールという人の曇りない仕事人間ぶりを崇高なまでにあらわしていて、なかなかいい。ただし、これも最初見たときから思っていたけど、ヴァルジャンに救われて、生きる基準が狂って動揺してよれよれになって身投げするときの印象は逆に薄い。あの「星よ」を確信にみちみちて歌ってたような人が、崩れて壊れてしまったら、もっとものすごいことになるはずで、そういう姿を見たいと思う…などというのは、原作の小説でグランテールが兵士たちに向かって「二人を一発でやってくれ」と言うのと同じくらい無茶な注文ではあるよなあ多分(フランス語の原語じゃどうなってるか知りませんが、肩を並べて横に並んで立ってる二人を一発で殺せるような、ロビン・フッドかホーキイ・バンボーなみの射撃の腕があったら何も普通に一介の兵士なんかしてないだろうと、読むたびに考えてしまう)。

前に私の席の後ろにいた若い二人が、エポニーヌがマリウスの本を投げつけるのが「そんなこと彼女はしそうにない」とひそひそ文句を言っていたから、これは新しい演出らしい。でも私は、エポニーヌはいちずだけど、その分どっかがさつな面が絶対あって、それは育ちとかには関係ない本質的なもので、だからマリウスも恋愛対象として見てなかったという解釈なら、すごく納得いくし、そういうとこも含めて彼女は魅力的と思うので、あの演出はわりと好きだ。

昨日の後ろの席には中年のご婦人が二人座っておられて、学生たちの場面のあとで、「熱いわねえ」と感嘆されていて「昔は日本の学生もああだったけど、今は何もしないわね」とか言っておられた。ほらやっぱり、新聞もテレビもほとんど報道しないから、60年や70年のころより、私に言わせりゃよっぽど熱い、学生たちの抗議行動は、まだまだ知られていないのだ。
昨日のアンジョルラスはまた上原さんで、やはりものすごくカッコよかった。もっとも見ていて絶対にこれはアンジョルラスではないなとは思うのだが、どういうか田舎の盆踊りみたいな威勢の良さ(ほめてます。田舎の盆踊りがどんなに迫力あって魅力的か皆さん知らないでしょう)で、水を得た魚のようにぴちぴちしているので、ああもうこれでいい文句はないと心からあきらめてしまうし、まったく思い残すことはない(笑)。

そもそもアンジョルラスはややこしい人で、こんなこと言ったら彼のファンに殺されそうだが、私は彼とグランテールの関係って、ひとつまちがうと、太宰治が「お伽草紙」で書いた、かちかち山の残酷美少女ウサギと汚い中年男タヌキに近いところもあるんじゃないかと思ったりする。さっき読んだ中島京子さんの文庫本「名画の謎」に出てくる狩りの女神ダイアナに関する描写で、引用されていたから思い出したんだけど。

ちょっと「星よ」の話に戻るけど、あの直後にガブローシュが「えらそうに何を言ってるんだ、この街を支配してるのは俺だ」みたいに短く歌うのは、どうなんだろう。誰のジャベールでも、「星よ」は圧巻のはずだし、ジャベールの気高さや哀しみも歌いこまれる感動的な歌だから、それをあのような形でおちょくるのって、どういう効果をねらってるのかな。ガブローシュ役の人にも、あれは気の毒だ。うまく行った場合はどういうことになるのか、ちょっと知りたい。映画ではカットしていて、そのほうがよかったんじゃないだろうか。

でも、関係ないんだけど、バリケードでそのガブローシュが、弾薬がなくなったからと死者の弾をかき集めてて撃たれる最高の緊張する場面で、つい前日の国会答弁の「弾薬は武器ではない」を思い出し、ここに来てそれ言ってみろやとか、ほら見ろ兵站や後方支援や補給は命がけだろうがとか、つい考えて気は散ったが二倍楽しめたかもしれない。

あ、そう言えば友人の一人は、「安倍さん、安保関連法案の名称覚えてなかったみたいよ」と教えると、面白くもないといった声で、「その内きっとまた閣議決定で、『ちゃんと知ってました』って発表するんじゃないの」と言ってましたっけ。

◇そりゃそうと、「レ・ミゼラブル」の原作をちらちら読み直していたら、ときどき吹き出しそうな表現がある。学生の一人クールフェラックについて書かれた、これなんかもそのひとつ。

クールフェラックは、才知の若々しい美しさと呼べるような、青春の活気にみちていた。そんなものは小猫の可愛さみたいなもので、時がたてば消えてしまい、その美しさも、二本足では、ブルジョワに、四つ足では、牡猫になるのがおちである。

最近とみに、おっさんぽくなった気のするカツジ猫に、読んで聞かせてやろうかしらん。

◇ううむ、自分の日常でも、政治情勢でも、書きたいことはまだまだ山積みなのですが、今夜はここまで。学生たちの運動は、いろいろと新しいかたちを生み出しつつ、他の世代や各地に広がりつつあります。明日は高校生の集会とデモが行われる模様で、成功を心から祈ります。もちろん大人も参加できます。

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カツジ猫