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わー、あなどれん。

◇「赤毛のアン」シリーズの最新作にして最後の巻、かな?「アンの想い出の日々」というのが出ました。まあ、タイトルからして、あまりインパクトはないし、ぱらぱら見たとこ、ほんとに作者の晩年の、余話というか、落ち穂拾いみたいなもんのようでしたが、戦死したウォルターの「笛吹き」の詩なんぞがあったりして、つい買ってしまいました。ほろ苦くあまずっぱい、子どものころの思い出にひたることになるんだろうとか思いながら。あのころ、アンとその家族は私にとって、現実の周囲の誰よりもリアルな存在でしたっけ。

◇…などと、甘く見ていたら冒頭の中編で、ひゃっと、のけぞりました。やるなー、モンゴメリ。それで思い出したけど、私が「アン」シリーズを好きだったのは、このシビアさと暗さと激しさだったのだよなー。
「アンの幸福」に出てくる、しょーもない「アンのにせもの」みたようなヘイゼルなんてゆー女、私、こんなにこのタイプを、きっちり描いて本質を暴露してくれた小説なんて、他にひとつも知らないもん。

今度の本のその中編でも、とんでもない女の、とんでもない正体が実に生き生き描かれていて、もうほんとに、笑っちゃう。いるよいるよこういう人は。それをこんなに、軽やかに甘やかにしれっと描けるモンゴメリって、やっぱ、ただ者ではなかったんだって、今、思い出しました。

◇何かこう、年とった往年の名選手の試合見に行ったら、現役にひけをとらない、色あせない名プレーを見せられたようで、驚きつつも幸福です。そう、この苦さとすごさと鋭さとが私とっても好きだったんだよ。
アガサ・クリスティーやオールコットの世界も似てるけど、彼女たちは作者も登場人物も、世間と多数に囲まれて、溶けこんでる。モンゴメリは、彼女自身も登場人物も、いつもしゃきっと、すっきり、一人で立っている。いつも、さわやかに、孤独だ。それが、とても、とても、私は好きだったんだと、今あらためて思い出してる。

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カツジ猫