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エレベーターとタメ口。

◇この前テレビを見ていたら、最近老人が突然ぶち切れる現象が社会問題になっているそうで、まあ老若とわずイラつくことの多い世の中では、戦闘的な人間が多い旧世代はやっぱりそういうことになるだろうなあと思い、自分も気をつけないとと思っていた。でも、この数日変なことでイライラして、やっぱりこれは私もぶち切れ予備軍なのかもしれないぞ。

そう思いながら、まあどうでもいい程度のことから書いておくと、先日私が自分が講師をしている講座に遅れそうで冗談でなく急いでいる時、エレベーターに飛び乗って、ボタンを押す間ももどかしく指をのばしたら、はるか向こうの方から若い女性がやっぱり急いで「すみませーん」と息を切らして走って来た。

正直、寸秒も惜しい状態だったから、知らん顔して上がってやろうかという誘惑に激しくかられた。かられはしたけれど、そんな自分を恥じて私はにっこり「開延長」のボタンを押して彼女を待った。「すみませーん」と言いながら彼女は乗って来て、まあそこまでは、別にこれといって、どうってことはないのだよ。

エレベーターには私たち二人だけだった。すぐ二階について、大抵の人はそこで下りるエレベーターだから、おたがいに相手がそこで下りることは予想がついた。そして私も急いでいたから、飛び出そうという気配はそれとなくはっきり漂わせていたと思う。
しかるに女性は、あいかわらず「急いでます!」という感じで、私を押しのけるようにして先に飛び出して行った。

何でもうそれだけのことに、そんなに不愉快になるのだと思うぐらい一日私は不愉快だった。ちなみに彼女が入って行ったのは私と同じカルチャーセンターのロビーで、彼女は受講生か講師か知らないが、どっちにしても、死にかけた病人を救おうとしている医者とか、凶悪犯人がしかけた時限爆弾を解除に行く技術者とかいうことはあり得ない。要するに何を急いでいたにせよ、私と同種類の、多分同程度の状況であったとしか思えない。

◇彼女にして見れば、自分ほど急いでいる人間は他にいないのだから、自分が最優先されるべきなのはあたりまえという判断であったのだろう。そして、多分ここが私はいっちばん激怒しているのだろうが、彼女が遠くから走って来るのを、のんびりエレベーターのドアを開けたまま待っていた私は、絶対に自分ほど急ぐ状況ではないととっさに判断したのだろう。

私が怒り狂うポイントって、いくつかあって、それはこういう風に、「あー、あなたは人に親切にする余裕があるぐらいだから、そんなに困ってないんでしょ。だから恵まれてるあなたは、せっぱつまってる私に奉仕するのがとーぜんよね」と、ぴきっと瞬間に頭で判断してしまう、その精神つうか思考回路なのよね。

人に親切で優しくするからって、その人に余裕があるとは限らんのよ、バカ。
ぎりぎりで必死で内心葛藤して、その人なりのものすごい犠牲を払って、あなたのために何かをしてあげていることだってあるわけなのよ。
自分がそういうこと絶対にしないからって、そういう人間も世の中にかなりの数いることを想像ぐらいしとけよな、と言いたいけど、でも絶対に想像もしないんだろうな、こんなやからは、と思うと、またしても怒りがふつふつとこみあげる。
一番いやなのは、もう多分これからは、私はあんな時絶対に「開延長」のボタンなんか押さないぞと思ってしまいそうになることだ。そんな低級な人間に、あんなバカ一人のために、自分が成り下がってしまいそうになることが何より情けない。

◇もうひとつは、またちょっと事情がちがう話だが、少し前に、ある高齢者とちょっと対立することがあった。くだらんことで、まあそんなに深刻なことでもどうっていうことでもない。私は根に持つときには徹底的に根に持つが、これはそういうエネルギーをさくほどの大したことでも何でもない。
相手もまあそれほどに私とことをかまえる気もない。要するに二人の関係は、さりげなく普通に続いている。

でも、その高齢者は、これまで私とは普通に会話していたのだが、気がつくと、ちょっとタメ口になっている。言ってみれば「雨になりそうですね」と言ってたのが「雨になりそうだね」になっている感じだ。
まあこれもそんなこと、まったくどうでもいいのだが、まさかその人が私に親しみを感じはじめたはずはないから結局これは、私への敵意とか軽蔑とかいうものを、それなりに、そういう言葉遣いであらわしているのだろうと思う。

まあそれも、どうでもいいっちゃあどうでもいいのだが、先のエレベーターの女性と同様、なんかこう、ものすごくみっともないものを見せられた気分で、すごくうんざりする。
私はくだけた友だち口調は、よっぽど好きな相手にしか使わない。嫌いで、さげすんでいる相手ほど、ていねいな口調と腰の低い態度で接し、最高の礼儀作法を遵守する。まあそれも、いやみにはちがいないが、嫌いで、さげすみたい相手に、「おまえなんか自分にとっては何でもない存在だぞ」ということを示すために、乱暴な言葉遣いや粗暴な態度を取るという、その発想というか精神というか思考回路というかが、背筋がぞくぞくするほど気持ちが悪い。

◇私がヘイトスピーチだの、中国や韓国の悪口を言う人を嫌いなのは、もちろん、その内容もだが、自分が敵意を抱く相手に、あからさまに粗暴な態度や発言をしてしまうという、その、無防備さ、しまりのなさ、悪意のだだもれ状態のたれながしのだらしなさ、というのが一番見ていて、げんなりするからかもしれない。
悪意や敵意は大事に自分の心の奥に、宝物のようにしまってカギをかけておくもんですよ。
私が仮に中国や韓国を嫌いだったら(というか、こんな風に国や組織や団体や人種をまとめて好きになったり嫌いになったりするという芸当が、私にはそもそも不可能なんですが)、そんな気持ちはおくびにも出さず、にこにこしてつきあって、でも最低限のつきあいですませます。相手を完全に滅ぼせるという確信がなかったら、戦いなんか始めません。

だから、こういう態度をとって相手を見下して優位に立とうとしているらしい人を見ると、それこそ公園で性器をむきだしにした痴漢を見たような気分になります。そっちの方がまだましかもね。

◇それと重なるのかどうなのかわかりませんが、私は同年齢や年上の男性に不愉快な関係を迫られるとき、うんざりして友人知人に実情を話して相談すると、実によくいつも言われるのが「ちょっとねえ、この人、自分では気づいてないかもしれないけど、あなたのこと、すっごくバカにしているよ。多分それは、あなた

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カツジ猫