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オヤジばばあ。

◇トシをとると、ちょっとした旅行でも、電車の長旅の最後の方では退屈もあって、疲れる。
今日は、乗り換えのとき、ちょっと時間があったので、少し刺激的なものを食ったり読んだりしないと、最後の時間が乗りきれないと判断して、売店でえびマヨのと牛めしのとおじさんみたいな選択のおにぎりを二つ買ったついでに、これも、もろおじさんが買いそうな(いや、この発言は差別だ)ビッグコミックと、あと何とかいう女性の裸の写真がいっぱいのってる、あやしげなのと、週刊誌を二つ買って新幹線に乗った。

若い男性が大きな荷物を前において、むっつり座っている前を「ごめんなさーい」と通してもらって、窓際の席におさまり、大口あけておにぎりにかぶりつき、ハメ撮りがどうたらこうたらとか怪しげな記事満載の週刊誌をていねいに読んだ(ハメ撮りの記事は、わからない用語がいくつもあって私も時代に遅れているなと実感したぜよ)。隣りの男性がどういう顔をしてたかは知らない。ちなみに私は、赤毛のアンなら喜びそうな大きなちょうちんそでの黒い上着にパールのネックレスをつけてベレーをかぶるという何者かさっぱりわからんかっこうをしていた。

電車の中で寝ている女性の胸元や股間を盗撮したのも平気で載せてるし、まあこんな感覚がまかりとおるのでは、わが国だかこの国だかが、慰安婦問題に鈍感なのも、女人禁制の沖ノ島を世界遺産にしたがるのも無理がないわなあと、納得してはいかん納得をした。例の透析患者は死ね発言のアナウンサーが炎上の利用のしかたをしゃべってる記事などもあった。
しかしそういうカオスの雑誌だから書けるのか、安倍晋三の外交は失敗だらけで行きづまってるとか、浅田真央にはふれてはいけないタブーが多すぎるとか、北朝鮮よりアメリカの方がずっと悪いとか、なかなかよそでは見られない、それぞれたしかにそのとおりな記事もあった。

浅田真央の引退会見で、金メダルがとれなかったことやキムヨナのことには誰もふれない異常さを指摘し、唯一キムヨナについてふれた質問をしたのは「しんぶん赤旗」の記者だけで、しかもそれがネットでたたかれてたという話にも笑った。
ちなみに私は「しんぶん赤旗」をとってるからわかるが、この新聞は宮沢りえとか浅田真央とかには、けっこう普通にミーハーで、まあある意味大衆の声を反映してか、ちゃんとほめるし持ちあげる。だから質問した記者に悪意がなかったことは、ほぼまちがいがない。むしろちゃんとした報道なら、あれだけ大騒ぎしたライバルのヨナのことや、もちろん金メダルのことだって聞いて当然だろうし、その方がいい記事が書けるはずだ。そういうタブーが生まれていること自体、やはり異常で誰にとっても不幸なことだ。

ヤクザの勢力争いを書いた記事も面白く、つい持って帰ることにしてしまった。ビッグコミックの方はほぼ読んでしまったので、そのまま座席の前の網に入れっぱなして、下りる準備をして、また隣りのお兄さんに荷物をよけてもらって通路に出ると、彼が無言で、残した雑誌を忘れてますよというように指さした。ああそれはもう読んだからいいですというように私も笑って手を振って、そのまま去った。でも彼はひょっとしたら、もう一方の方を残しておいてもらった方がうれしかったかもしれないなあ。いや、それも差別かな。

残してきた「ビッグコミック」も面白かったのだよ。冒頭ものすごいホラー調で太宰治の「人間失格」が連載開始されてるしさ。他にもいろいろ、ダイナミックな内容の作品が多かった。大新聞やテレビより、この手の週刊誌の方に、やけっぱちなパワーを感じるのは、マスメディアから閉め出された有能な書き手が、あぶれた結果こっちにあふれて(笑)来てるんだろうか。田沼時代の戯作者みたいに。

◇最近おるすばんに慣れてないカツジ猫は、夜中過ぎて帰った私を庭にも出て来ず、何だか不愛想に出迎えた。家の中を見たところでは、別に吐いても汚してもいないようだが、いつものように、にゃおにゃおと甘えてくることもなく、椅子の上で背中を向けてまん丸くなって寝ている。ぐれてるのかもしれない。

◇DVDで「ミモザの島に消えた母」というのを見た。邦題は何やらおしゃれだが、中身はけっこうシャープでダークでホラーだった。フランス映画みたいだが、こと愛を扱うと、ほんとに妥協なく人の残酷さを描くよなあと舌を巻く出来だった。どうすんだよもうこの人間関係家族関係はと、目をおおいたくなるほどすごかった。別におどろおどろしくはないのだが、いややっぱりある意味おどろおどろしい。「ダウントンアビー」なんて、悪口じゃないがこれに比べるとケーキみたいに甘い。そういや、ミュージカル仕立ての「8人の女たち」もたしかフランス映画で、たしか同じくらいすごかったなあ。

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カツジ猫