1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. サンチャゴに雨が降る

サンチャゴに雨が降る

スーパーに行ったら、恵方巻の売り場に人が集まっていた。少し離れたところに細い納豆巻が売られていたので、これなら食べられるかもと思って買って来て、ちゃんと南南東に向かって丸かじりしたら、けっこうな量で疲れた(笑)。
そう言えば何年か前、ネットでソフトバンクホークスの選手たちがトークショーか何かで、恵方巻を食べることになった時、柳田選手が、「去年と方角がちがう」とこだわって、皆が「毎年ちがうんだ」と教えていたのを思い出す。去年の方角を覚えているのも、無駄にすごい気がするが。
検索したら、記事が残っていた。私もしつこい。
でも、覚えてた人は他にもいたようで(笑)。

南南東が正確にわかるのは、叔父が遺したコンパスのおかげだ。十干十二支まで見られるすぐれもので、ときどき誰かにプレゼントしようと思うときもあるが、やっぱり好きで手放せない。

恵方巻を食べたあと、一人で庭に出て豆まきをした。ご近所に知られても、鬼を押しつけていると思われそうで、ちょっとこそこそ、自分の新旧二軒の家の回りをまいて回った。この豆はすごくおいしいので、本当はまくのがもったいない。もう一袋買ってあるので、明日からちびちびかじろうと思っている。

今朝、上の家に行ったら、おばあさん猫のグレイスが、ベッドの下の床にのびていた。いよいよ大往生かと思ったが、よく見るとしっかり息をしていて、エサもまあまあ食べていて、そのあとベッドに飛び上がって、まだまだ元気そうだった。床に寝るのは毛布だけでは少し暑いのかもしれない。タオルか布でも敷いといてやるかな。

ミャンマーのクーデターのニュースを聞くにつけ、チリのアジェンデ政権がCIAが画策したと言われる軍事クーデターで崩壊した日を描いた「サンチャゴに雨が降る」の映画を思い出す。大学院生だったか就職したてか、三十にもならぬ頃に、国会図書館などの資料を見るのに東京に行ったとき、新宿で大きな看板を見てなぜか心ひかれ、内容も何も知らぬまま見に行って、ただひきこまれ、ゆさぶられ、あわただしい日程の中、二度も見た。その時、一気にノートに書いた感想がどうしても見つからず、いつか出て来るだろうと思っていたが、去年の二月にたくさんの本や資料を失ったとき、それもなくなったかもしれない。

ずっとあとになって、DVDも手に入れた。しかし、それから何年もたつのに、まだ見ていない。どんなに心をゆり動かされて、どこに自分が連れて行かれるかが、恐いのだ。
軍事クーデターで、軍隊が官邸に攻めてくる中、脱出も降服も拒んだアジェンデ大統領と閣僚は、武器を手に官邸にこもって抗戦する。彼らが次々に倒れて、硝煙の中、官邸の階段に血が小さい川のように流れ落ちて行く場面を忘れない。世界で初めて、民主的選挙によって武力や暴力によることなく、独裁者を倒して成立した社会主義政権が、そうやって滅びた。

今のミャンマーの状況を見ると、民主主義とは何と生まれるのも育てるのも難しいものかと思う。それでも、そこにしかさしあたりは人類の進む道はないのだと、あらためて知らされる。

Twitter Facebook
カツジ猫