1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. シャッター・アイランドとか。

シャッター・アイランドとか。

キャラママさん。
退職おめでとうございます。世間の皆さんをだましてフツーの人間のフリをして60年間やってのけた、勝利の美酒に酔いしれておられる最中かとお察しします。信田の森に逃げないですんで無事に子育てもしおえた葛の葉ギツネとか、夜になったらオオカミや吸血鬼に変身しながら家族にそれを知られることなく、嫁さんか夫をみとって葬式もすませた老人とか、なんかそーゆー悦楽の心境なのではないでしょうか。

何しろ、高校時代の理想的な死に方で、おたがい言い合ってたのが、「信じてない思想のために活動して立派に死刑になる」でしたもんねー(笑)、覚えてますか?

んでもって、私は昨日はディカプリオの「シャッター・アイランド」を見てきました。時間が合わずにやむをえず、吹き替え版で見ましたが、最初の説明でこれは例の戸田奈津子さんの監修した、特別な字幕だったと思い出して、いろんな意味でぎゃあと思いましたが、しかし、案外特徴のない普通の吹き替えで、かえってまあ、ほっとしました。

映画はまーねー、予告編の時から「意外な結末、あなたは見抜けるか?」と大騒ぎされると、そんなこと言ってもこの設定で予測できる究極の意外な結末って、これしかないだろと思っていた、その通りだったので、それはさほどのけぞりはしませんでしたが、監督も俳優たちも重厚で底力があり、安心して楽しめました。

だいたいが、怪しい島に乗りこむ捜査官って、「ウィッカーマン」のニコラス・ケイジもだけど、そんなヤバい島に一人や二人でのりこむってのが、私のような臆病者にはすでにもう、正気の沙汰とは思えんのだよねー。「ザ・チャイルド」とか「鳥」とか、何も知らないでしょーもなくそこに閉じこめられたんならともかく、その島でなされていることの怪しさや危険さやすごさをある程度以上知っていて、なおかつほとんど単身でのりこむとか、おまえ人生なめとりゃせんかと言いたくなるので、どうもリアルにのめりこめない。まあ、「シャッター・アイランド」の場合は、それでいいわけですが。

その少し前に「プリンセスの魔法のキス」と「NINE」も見ました。後者はただ単にショーとみても楽しく、歌と踊りを実に満喫できました。ダニエル・デイ・ルイスはねー、開拓時代の汚れ役もそりゃ上手ですが、やっぱりこういう、セレブでわがままで弱気でデリケートで、使いにくいけど見てるだけで楽しい高級陶磁器みたいな役の方が断然いいなあ。これまで見た彼の映画で一番好きなぐらい素敵でした。言いかえれば、彼がこの役やってるんでなければ、もうどうしようもなく見る価値もない映画になったかもしれない。

大がかりで金かけまくった映画製作が、ルイスの演じる監督の実にどうでもいい個人的な男女関係の悩みのために、行きづまってワヤになるというのが、もう逆にものすごく華やかでゴージャスに見えて、うっとりしました。なので(以下ネタばれ)、最後の彼の立ち直りはありゃいらんと個人的には思いました。ハリウッド映画ならではの健全さかもしれないけど、あそこは、壮大なものがすべて壊れて無に帰した、で終わっておく方が逆にどんなに豪勢だったか。そこが残念。

長すぎるみたいなんで、わけます。

Twitter Facebook
カツジ猫