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ストロマライト。

◇昨日は友人と街で久しぶりに会って食事をしました。
彼女は海外旅行によく行きます。面白い話題も山ほどあるはずなのに、実際に会うと私の世にもしょーのない身辺のグチや怒りに話題が終始し、あとでいつも、もっと彼女の豊富で雄大な話題を聞きたかったと反省します。赤毛のアンが校長先生をしていた時に下宿していた「柳風荘」の大家の老婦人の一人チャティおばさん(の方だったっけ)が「自分はおしゃべりなのに、この町から出たことがなくて、もう一人の彼女(ケイトおばさん)は世界を回って来てるのに無口であまりしゃべらなくて、うまく行かないものだ」と嘆いていたのを思い出します。

で、その彼女が最近行ったオーストラリアでの話。彼女はもう何回もそこに行ってるのですが、元社会の先生で考古学にも興味があるので、そこにある地球最古の酸素を生みだした生物(サンゴみたいなの?)のシアノバクテリアを見に行ったのらしい。それで、彼女がぼやくには、何年か前にそこに行ったとき、山崩れか何かで、道にちらばってた石の中に、そのシアノバクテリアの化石のストロマライトとかいうのじゃないかという石っころを見つけて拾って、ガイドに「これはストロマライトの化石じゃない?」と聞いたら、「そうですよ。でも持って帰っちゃだめですよ」と言われたので彼女、「ああそう」と、ぽいっとそのへんに放って来たのだって。

「私もバカだよ、聞かなきゃよかったんだよ、黙って持って帰ってればよかった」と、彼女がやたら悔やむので、ふうんと思っていたところが、「今度同じ場所に行ってみたらさ、その一帯ばあっと、コンクリートで固められて駐車場になってたよ。あの化石、今ごろコンクリートの下だよ。そのくらいなら、私が持って帰ってりゃ、皆が見たりもできたのに」って。そういうこともあるんですねえ。

◇突然変に読みたくなって、井上靖の「憂愁平野」を古本で買って読んでます。むかーし「週刊朝日」に連載されてたやつです。あのころはそんなこと気にしなかったけど、たしか井上靖って、純文学でも大衆文学でもない「中間小説」とか言われてなかったっけ。
あらためて、たしかにそうだなあと思うのは、ほんとに純文学っぽい繊細な描写や品格もあるのに、重っ苦しい暗さはなくて、すいすい読めるしサービスもいい。菊池寛とかもそうだけど、井上靖ももっとちゃんと評価されていい作家なんじゃないのかなあ。この人の「黒い蝶」っていう、ある意味国際的なドタバタものも、私はそこそこ好きで印象に残ってるのだけど。

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カツジ猫