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フルドド、ホンバ、インレの黒ウサギ…

「ウォーターシップダウンのウサギたち」のDVD見てると、忘れてたウサギ語がいろいろ思い出されてなつかしい。フルドド(車)、ホンバ(きつね)、インレの黒ウサギ(死神)などなどなど。でも、あれだけどっしり大量の、そして面白い内容を、こうもあっさり短くまとめてしまうと、予告編やあらすじより短い気がしてしまう。よく出来ているんだけど。

そして私が大好きだったウーンドウォート将軍の最後の場面のナレーションの、甘ったるい女性の声はやっぱり日本語版の吹き替えだけで、もとのはクールで渋い男性の声だった。やっぱりなあ。どうして日本の映画はこの甘ったるい女性の声を使うのが好きなのかなあ。たまたまこの場合には、この場合だけは、妙に私にはツボだったからいいけどさ。

ついでに、またそろそろ見たくなったDVD「ホリデイ」の感想もちょこっと。Amazonの批評で見ると、おおむね私と同じかそれ以上の高評価なんだけど、それは人さまざまだから中にはやっぱり「長すぎる」「見ていて苦痛」「ありえない不自然さ」みたいな、同じ映画を見たのかって思うような感想もある。まあそれが世の中だ。

不自然、ウソっぽいと言うのはそりゃそれでたしかで、普通、犬まで含めて短期間でも見知らぬ他人と家を交換したりはせんわな。でも、それ言ったらおしまいで、この映画はわかった上でそんなことはぶっとばして、虚構の上の真実を描いてるファンタジーなんだよね。それが気に入るかどうかは人によってちがうだろうけど、ファンタジーでしか書けない楽しさや美しさっていうのはあるんだからしかたがない。

隣人の老脚本家が短期間にリハビリ成功して元気になるのも不自然と言う人がいたけど、あれもとてもいい挿話(というか欠かせないパーツ)で、まああんなきれいな若い女性にトレーナーになってもらったら、そりゃ奇跡的な回復もするわという話はさておき、私は最初に見たときの、まだこんなに年取る前から、あの老脚本家が晴れの舞台に上がるまでの過程と結果は本当にわくわくしたし幸福だった。私は勲章とか表彰式とか現実にはちっとも魅力を感じないし、自分のそういう催しもすべて全力で回避してきて、やったぜという達成感に包まれている人間だけど、他人の話で、作品で言うなら、こういう達成や成功の場面が描かれるって、本当に少なすぎると思ってる。

それこそまだ子どもと言っていい中学生か高校生のころ、もちろん映画館でベルイマンの「野いちご」を見たとき、老学者が表彰の会場に向かう途中の道で、あれこれ悩んで思索にふけるみたいな、もう子どもには何一つわからんような映画だったのに、いやだからそのせいか、最後に彼が他の老学者とともに会場の壇上に上がって表彰され、胸に勲章みたいなのをつけられる場面だけが、とても鮮やかに記憶に残っている。ああ、偉大な学問の功績はこうやって評価されるのか、おごそかに、ひっそりと、厳然と。そんな思いとともに目の底にその映像がやきついた。それっきり、映画でも小説でもドラマでも、多分一度も、そんな場面に遭遇しなかったこともあるけど。華やかなアカデミー賞の授賞式やスポーツ関係の優勝祝賀パレードその他は、毎年あきるほど見させられていたのに。

高校球児やスポーツ選手や芸能人が、血のにじむような長い努力に明け暮れて、それでも報われないこともあるなんて話は普通に蔓延しているけれど、学者だってその通りかそれ以上で、それこそ一生かけて、ぼろぼろの老人になるまで、誰にも知られず報われず営々と研究して何の結果も出ない人たちっていくらでもいる。たまーに派手に取り上げられたら小保方さんみたいな取り上げられ方だったりする。あ、ノーベル賞があったか。でもあれも、その時限りで、何が偉大なのか私でさえもあまりよくわからないような注目のされ方だもんなあ。

まあこのことは、また書くとして、「ホリデイ」に話を戻すと、二人のヒロインの内、ケイト・ウィンスレット演じるグレイスの悲劇は、ありふれすぎててわかりやすいんだけど、キャメロン・ディアス演じるアマンダの悲劇って、きちんと描かれているんだけど、あまりはっきり見えないんだよね。だから彼女の心理や行動が無責任で唐突で現実離れしてるって、感じちゃう人もいるだろう。そう感じさせないのが、この映画のうまさじゃあるけど、感じる人がいたっておかしくはない。

でも、何度も見れば見るほど、満ち足りていて強気な人生のような、アマンダの傷は深いのよ。とても深い。彼女の人生の行き詰まり方と危険な絶望感は、アイリスのそれと同様、スマートにきれいに処理されているけど、きっちり伝えられてるし、描かれている。どんな恐ろしい最後を迎えるかもしれない、ものすごく不幸な状況にいるのですよ彼女は。それを実感しなかったら、彼女の行動はそれは納得も感情移入もできないと思う。

わー、朝っぱらから水まきも猫の世話もしないで、こんなこと書いてる場合かよ。コーヒー入れて、ごはんでも食べます!

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カツジ猫