マクベス症候群
村山富市元首相が百三歳で亡くなったそうで、テレビでいろんな報道がされている。その政治家としての歩みを見ていると、あらためて、連立というものや、石破首相の80年談話と村山さんの50年談話との比較など、さまざまに気づくことも多くて、原点ではないが、中間地点になと引き返して見直す気持ちになる。もしかしたら、この死さえも、村山さんの私たちに呼びかける最後の政治活動だったのかもしれないとまで、つい思う。
私が当時のことで覚えているのは、彼の大分の自宅が、古い昔の普通の家で、警護を担当する人たちが、ものすごく警護しにくいのでとても困ったという話だ(笑)。つまりそれだけ、庶民的で開放的な暮らしをしていたということだろう。そういう点でも上に立つ人の資質があった人ではあった。
今日のパ・リーグCSだが、ホークスファンにはいやな話だろうが、何となくここ数日の様子を見ていると、あまり覚えているのではないが、王監督の引退の前の最後の数試合で、戦っても戦っても、どうしても勝てなかったときのことを思い出す。負けてはならない王監督の花道だと思って皆が必死に懸命になるほどに、うまく行かなくて、たしか一勝もできないままだった。あんなに強くても、あんなに全力でも、そうなるのかと、不思議で少し恐かった。あとで、他のどこかの選手が、「あのベンチの雰囲気では自分でも勝てない」とか言ったのも聞いた。暗くも無気力でもなく、むしろ一丸となっているからこそ、緊張感で窒息しそうになるのだろうか。
私個人としては、あまのじゃくなので、あの時からホークスのもろさと弱さが愛らしくて、どこか好きになったのだから世話はないが(笑)。だから今さら何があったって、びくともしはしないが(笑)。
今シーズンは誰もが認めるように開幕から負傷者が続出し、最下位に沈みながらリーグ優勝にこぎつけたということが、すでにもう奇跡に近い。そうなると人は完璧なドラマを求めるから、そのまま日本一も期待するし、選手もそれをめざすだろう。それで勝てるならいいが、王監督引退のときのように、ノルマになって縛られたら、つらいし危険だ。
シェイクスピアの悲劇「マクベス」では三人の魔女が、主人公に「いずれ今以上の領地の領主になり、やがて国王になる」と予言し、実際すぐに、より大きな領地の領主になる。それで主人公はひきつづき王位を期待し、ついに自分で王を殺害して、王位を奪い、最終的には自滅する。実際の世間でも、よくある心理で、それが魔女の目のつけどころなのだろう。私自身も、よく陥りそうになる。
あれだけの奇跡の逆転でリーグ優勝したのだから、CSにも勝って日本一になるのでなければいけないと思っているなら、身体も心もかじかむだろう。
CS突破も日本一も、この先まだまだいくらでもできる。チームも、選手個人も。今回それを逃したって、今シーズンの奇跡のリーグ優勝の価値はちっとも傷つきなんかしない。
日本一をめざすのも、がんばるのもいいが、というか当然だが、だめもとと開き直って、身体も心も大事にしながら、長い未来を見つめてほしい。短期決戦だからって、そんなに深刻にならないでいい。自分を追い詰めないでいい。
