ミサイルの比じゃない。
◇まったくの、ただの、あくまでも冗談ですが(笑)、この前ネットで、萩尾望都の漫画「ポーの一族」がドラマ化されて主役が香取慎吾だという記事を読んだときは、とっさに、「ああ、こんなことを目にするまで生きているのではなかった」と、憲法九条がなくなるとか、自民党の憲法草案のように「個」の文字が憲法から消えるとか、そういう日のために使うようなことばを連想してしまいました。いやだから、あくまで冗談ですってば。
私は大学院のとき、「ポーの一族」などいわゆる「花の24年組」の少女漫画家たちの作品を読んで、その繊細で鮮烈な画風やストーリーの精緻さに驚嘆し感動しました。もっとも「トーマの心臓」の方が好きで、「ポーの一族」はものすごくはまったファンというほどではありません。むしろ、私程度の者がファンなどと言ったら、真剣なファンに失礼だというような気持ちがあります。
スマップの皆さんについても特に嫌いではないし、草君が公園で酔って裸になったかなんかで、社会問題になった時は、そんなことぐらい何が悪いと相当腹を立てたものです。実はあの時に、「人気がある者はそれなりの自覚を」みたいな、したり顔のコメントをしたという点で報道ステーションと古舘キャスターには、いまひとつ信頼感が持てないのだよね。
ではありますが、それにしても、こんなニュースを知った「ポーの一族」のファンの方々が特に抗議もされていないようなのが、いっそ不思議でなりません。冷たい憫笑を浮かべて沈黙しておられるのか、それとも皆さん憤死されてしまったのか、もしやけっこう歓迎しておられるとか?
まあ、ていねいに記事を読んだら、ドラマ化というほどのものではなく、これで何で「ポーの一族」の名が出るのかと、むしろ不思議なくらいでしたが。騒ぐほどのことではないということなのでしょうか。
◇それはともかく、首相が任期中に改憲をとか言い出したのは、私の感覚では、もうほんとに行きづまっているのだなあという感想しか持てなくて、今の日本ですることや、しなくちゃならないことなんか、それ以外に山積みで、どう考えても憲法なんていじり回してる場合じゃないでしょうに。
そして、どうせ日本の国防とか近代の超克とか、根本的な問題をじっくり考えて問いかけて話し合おうなんていうことではなくて、どさくさまぎれに緊急事態がどうとかで、とにかく何かをちょこっと変えて、自分の業績にして自己満足をしようという気持ちがすけすけなのが一番不愉快です。この首相はいつも、すること言うこと考えることがさかさまなのよ。人に気に入られようとして政策を考え、発言をし、でも人のためになるような、人を幸せにするようなことをしようという発想は何もない。
口ばかり、嘘ばかり、金ばかり、というのが、私の首相に対する印象として固まりつつありますが、もうこっちも時間がないから手抜きで「しんぶん赤旗」に載ってた早稲田大学教授の水島朝穂さんの言ってることを引用しておくと、自民党が「多くの国は緊急事態条項を持っている」と言ってるけど、アメリカにはないし、フランスはあるけど危険すぎて使ったのは戦後一度だけ、ドイツでは「本来の作った意図は95%実現しなかった」というほど、厳しいしばりをかけているそうな。
日本の憲法に緊急事態条項がないのは、うかつだからではなく、しっかり考えた上での選択だと。そして、政府は戦争法で海外の武力行使を可能にしたけど、国内でそれを支えるために、市民の権利や自治体の権限を制限する法律は反対を恐れて十分に作れなかった。それを今回、緊急事態の名のもとに作ってしまおうとしていると水島さんは指摘しています。
「緊急事態」の名のもとに、ふだんは認められないことがどんどん強行され、家も土地も財産も奪われかねない、軍人でなくても戦地に行かされるかもしれない、そういうものでしょ、この法律は。しかも戦争法みたいな重要なものを、あれだけがたがた、ぬけぬけ、すかすかのままで成立させて平気でいるぐらいなんだから、どうせドイツみたいな厳しいチェックなんかするわけがない、考えるわけがない。
はっきり言って、どう考えても、北朝鮮のミサイルよりこっちの方が私はよっぽど恐ろしいわ。原発の再稼働もたいがい恐いけど、この緊急事態条項が安易に決まったら、それこそ原発がどこにあってどんな状態かも、機密事項で誰にも知らされなくなる。そして国民は汚染された川で野菜でも洗って食べるんでしょ。釣った魚をおさしみにするんでしょ。「放射能廃棄物」のDVDでもよくわかるけど、「軍事機密」の名のもとには、どんな非人道なこともまかりとおってしまう。
◇怒ってる間に夜なかをすぎたし、明日も早いのでもう寝ます。今日は三か月ぶりにジムに行きました。体重はしっかり3キロ増えていました。明日からがんばらねば。
そう言えば、上の家を片づけていたら、研究室に飾っていて、退職のときにしまいこんで忘れていた、おひな様が出てきて、すべりこみで昨日棚にかざってやりました。まあ旧暦のひな祭りってことで、あとひと月ぐらいおいといてもいいかな。
それと、橋本治と中野三敏先生の本を書棚の整理かたがた、拾い読みしていたら、二人ともが「近代」について書いているのが面白そう。「九条の会」の勉強会で、自民党の憲法草案の前近代性にふれながら、ちょっと報告してみようかな。