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ユキヤナギの香り。

◇今夜も帰りが遅くて、ついさっき家に着いた。あいかわらず月がきれいで、その月に照らされて、うねりひろがったユキヤナギの白い枝が圧巻だった。空中で音のない音楽が鳴っているようだった。

少し前から玄関に何とか言う観葉植物みたいな切り花を飾っている。赤茶色のような紫のような。それだけではちょっと淋しいので、ユキヤナギのいくら何でも伸びすぎた枝を数本切っていっしょにさしておいた。
玄関に入るたびに、ほのかに、ふしぎな香りがただよう。華やかではないが、神秘的な快い香りだ。この植物のせいかなと、買った花屋で聞こうかと思っていたが、今夜満開のユキヤナギのそばを通ったら同じ香りがしたような気がした。こっちの香りだったのかな。本当にかすかなのだが。

◇田舎の実家を片づけていたら、10年前、叔母の相続の時に使ったのも含めた印鑑類がごっそり見えなくなって、どこかにはあるさと高をくくっていたのが、ようやくひとまとめに見つかった。めでたい。まあどっちみち、その後、実印も変更したりしているので、さしあたり使う予定はないのだが、やはりほっとした。
多分、叔母の使っていたと思う、小さい裁縫箱も出て来た。私の裁縫箱はこれまた最近どっかに消えてしまったので、しめしめと持ってこようと思っていたら、棚にのせたまま忘れてきた。くやしい。今度はいつ行けるのやら。それまで、ちょうど今着たらいい、サクランボ色のスーツのボタンがつけられないじゃないか。

◇実家はじわじわ片づけようと思っていたのだが、いろんな事情で一気に整理しなければならなくなりそうで、まあ短期決戦が得意な肉食獣(ライオンが飢え死にしそうになるまで寝ていて、がばっと起きて獲物を倒してむしゃむしゃ食いまくるのに対して、草食動物はちびちびずっと食べ続けていないと死ぬとか言うから)系の私だからいやじゃないが、どうもまたいろいろと大変な春になりそうだ。

これはもう、手伝ってくれそうな人を片っぱしから呼び集めるしかないかと、実家近くの親友に電話して、いつが空いてるか聞いた。私が実家の電話でかけたので、彼女は「あんた今どこにおるん?」と不思議がり、「帰って来てるんよ、そっちは?」と言うと、「あたしゃ今、車でヤマガのあたりを走ってる」と、とんでもない方面の地名を言う。何してるのかと聞いたら、「戦争法反対の2000万署名をとりに回ってる。もうすぐ〆切やろ」だって。たしかこの前の電話では、もう世の中のことなどどーでもよくなった、何もしないと言ってたので、こっちが面くらった。まあ悪い気分ではない。

◇さて明日は一日、熱海紀行の翻刻をして、講座の最終日の資料をそろえないと。うー。

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カツジ猫