1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. 日記
  4. リフォーム始まる。

リフォーム始まる。

◇何とか雨は降っていないが、朝から曇って、うすら寒い。
上の家の二階のリフォームをするので、朝から大工さんが来た。その前に二階に暮している灰色猫のグレイスを別の部屋に移動させるという大事業があった。彼女はパワフルで人懐こい、いたずら好きの子猫だったが、今は15歳のおばあさんになっていて、それでもめっぽう元気だが、おとなしく別の部屋におさまっていてくれて、ほっとした。

◇三毛猫シナモンの命日には、下の家のカツジ猫がいかに鳴こうとわめこうと、夜中までは上の家にいてやろうと決めていたので、片づけがてら、ぼんやりすごした。田舎の家から持ってきた家具や額が、だいたいうまく納まって、いい感じになっている。
上の家には、ベッドのある寝室、仏壇のある仏間、木彫りの熊のいる居間、書庫、台所などがある。しかし、二階に上がる階段の下の小部屋や、白黒猫のマキが暮らしている物置につながるフローリングの部屋、一番奥の書棚のある部屋には、これといった名前がない。人に話したり、日記に書いたりする時にめんどうなので、ふと気がついて、田舎の実家の母家と、そのリフォーム部分、それに新宅につけていた、「留客洞」「ゆきうさぎ亭」「南生屋」の名をそのまま、ひきつごうかと考えた。それぞれ、知り合いの芸術家に頼んで、(タダで)木の切れ端に、その名を書いてもらったのを、壁にかけていた。
はずして持って帰って、それぞれの部屋の壁につけたら、どれも字が立派で風格があるので、そこから光と熱気が流れ出すような、素敵な一角になり、部屋全体も落ちついた空間になった。

さらにそうして、その夜ぼんやり家の中を見回していたら、どこに何をおけばいいというアイディアがひとりでに生まれてきて、先の展望も生まれて来た。こうやって、何もしないで考えないでたたずんでいると、壁や床の一角や一隅に、浮かび出すように、あるべきものが見えてくる。ひいては勉強の進め方や生き方までがずっと先まで見通せる。私がここ最近、ぶちきれそうにいらだっていたのは、こういう時間がなかなかとれないからだと、あらためて思った。

◇毎日新聞の世論調査によると、辺野古への米軍基地の移設は反対が50%以上で賛成の30%いくらかを大きく上回っている。私も翁長知事と官房長官や首相の話し合いが、平行線に終わったという記事を見るたびに、平行線というどちらかという実りのない、失望を呼ぶはずのことばが、こんなに力強く喜ばしく感じたことはなかった。

しかし、それでいて、安倍内閣の支持率は微増しているというのがわからない。憲法九条は変えない方がいい、暮らしが楽になった実感はないとかいう人が多数の中で、そういう人たちの意見とはまっこう反対のことをしまくっている首相の支持が増えるというのは何だろう。DVを受けている人間が、そういう相手と絶対別れられない、それは自分に自信がないからだという話を、この前友人から聞いたが、今の首相や政府を支持する国民は何だか非常にそれに似ている。なぐられて、ふまれて、けられて、それでも、これを拒絶したり否定したりしたら、もっとひどいことになるかもしれないという、救いのない心理になっているとしか思えない。それが救いのない心理ということにさえ気がつかないままでだ。

◇先日、髪のカットの予約をし忘れて、期間があいて、かなり髪が伸びた。きつくパーマをかけていたので、ライオンみたいにもしゃもしゃになっていた。美容師さんは、この次に新しくパーマをかけないといけないと言いながら、伸びた部分を皆切った。そうしたら、ほとんどただのショートカットになった。
非常勤先の大学の授業で学生から「先生、髪型変わりましたね」と言われた。女子学生じゃなくて男子学生なのが今風である。「そーなのよ、一回美容院行きを飛ばしたら、髪が伸びて、それを切ったらパーマの部分がなくなったの」と詳しく彼に説明しちゃった私も何だかなあ。

今期の授業は、昔出した本の「江戸の女、いまの女」を使って、馬琴の「傾城水滸伝」について講義している。なじみのないややこしい話が原作とパロディと二つからむから、学生たちは若干とっつきにくいようだ。まあその内に何とかなるだろう。その中で、「水滸伝と傾城水滸伝の一部分を選んで比較せよ」という最終レポートの課題で、自分の選んだ部分を届け出るのに、はやばやと花和尚魯智深のあばれる場面を申し出て来た女子学生がいた。「水滸伝、好きなん?」と聞いたら、「そういうわけでもないけど、魯智深が好きなんです」とのことだった。かわいいきれいな普通の女子学生だったけど、あの、暴れ者で飲んだくれの魯智深のどこがそんなにいいんだろ。たしかに豪快で痛快で、同じ乱暴者でも黒旋風李逵なんかに比べると、明るい人情派だけどさあ。

Twitter Facebook
カツジ猫