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今日も今日とて。

◇福岡の中洲大洋で、「帰ってきたヒトラー」の映画を見てきました。ドイツ映画なんですね。ドイツ語ってきれいな言葉だなあと聞いていて思いました。「ガリヴァ―旅行記」で、馬の国の馬語?が、ドイツ語に似てることになってたんじゃなかったっけ。ヒトラーの演説は、この歯切れよい美しさと力強さを悪用しまくったのかもしれません。

前に「トロイ」を見たときに、ブラッド・ピットの娯楽作でありながら、ものすごく骨太に反戦思想が貫かれてるのに感じ入ったのですが、あの監督もドイツ人と聞いて、さすがにドイツはそういうとこはしっかりしてるのかなと思ったりしたものです。だから、小説もですが、映画だって、おかしなことにはならないはずという信頼感はある一方、どういう風に、これまでにはなかった型破りをするのかと、期待もしていました。

それは、ちゃんと果たされていました。小説の精神をきっちりくみとりながら、映画ならではの設定や展開、映像美などがあって、いい意味で小説より派手になっていました。決してハッピーエンドではない、ある意味では絶望的な話なのに、暗い感じではないのが、かえって鋭く恐かった。

◇昨日見た「シン・ゴジラ」とは、視点も姿勢もまるでちがうのですが、ともに浮かび上がるのが、独裁者を作り出し許す世界の風景です。弱者のはずの人たちが、強者と同じ意識を持つことで、自分が強者のような幻想を持ってしまう、救えない風景が見えて来ます。
上映は明日までらしい。中州大洋は4時半、小倉のコロナワールドはたしか夜中の11時ぐらいだったかな。よかったらぜひ、ごらんになって下さい。

◇上橋菜穂子の「守り人」シリーズをいろいろ読んでいます。設定や展開は非の打ちどころなく面白く、安心して身をまかせられるんですが、どうも私皇太子のチャグム君が好きじゃないのね(笑)。いや特にきらいではないのだけど、なーんとなくね。それを言うなら主人公のバルサも、その他の人物も、どことなく、嫌いじゃないけど、好きでもない。皆、優等生すぎるのかしら。できすぎていて、つまらない。異常さや不健康さやバカなところがちっともない。こういう人たちでないと読者が文句を言うんだろうか。せめて悪人が強烈ならいいけど、悪人もまた、それなりに、まともなんだよなあ。ドリトル先生でもホームズでも、たいがいおかしな反社会的な人たちだったから、それに慣れてしまってるんだろうか、私は。

◇昨日の映画館で「永い言い訳」の映画のチラシがあったので、取ってきたけど、やっぱり主役の衣笠幸夫が、本木雅弘というのはどうかなあ。いい役者だし、好きだけど、原作の彼はもっと線が細い少女漫画チックな美少年風じゃなかったっけか。だから、もう一人のお父さんの野卑なパワーと対照的でいいのだし、あの人間関係作るのが下手で、なつきすぎるかと思えばぶちきれる不安定さも、そういう外見だから説得力あるところもあるわけで、その繊細さ、子どもっぽさが、本木君では絶対無理でしょう。

そりゃま、「風と共に去りぬ」のメラニー演じたオリビア・デ・ハビランドも、けっこうたくましそうだったのに、はかないメラニーをちゃんとみごとに演じたから、できないこともないだろうけど、でもさ、前にも言ったように、「レ・ミゼラブル」の歴代アンジョルラスとか、「紀ノ川」の義弟とか、「仮縫」の美青年とか、どうしてこう、はかない美少年風の男性って、映画や舞台では、そのまんまの感じじゃなく、わりと男性的な人に変えられてしまうんだろう。絶対に何か、おかしな先入観や配慮が働いてるんだと思うよ。

◇シールズの解散で、いろんな人がいろんなことを言ってるようだが、とにかく自分の考えを書いてからだと思ってまだ読んでない。中には相当腹の立ちそうなものがある気がするが、もうちょっと待っとけよ、首を洗って(笑)。全部ばりばり、私が踏みつぶしてやるから(ほんとかね)。

◇明日また人が来るので、家を片づけてもいないのに、スーパーで安いユリとバラを買った。ちょっとパーティーを準備するダロウェイ夫人の気分だ。こうやって日常のささいなイベントに命をかける(いや私はかけてないけど)ことの幸福さ、大切さを描いたバージニア・ウルフって、やっぱり偉大かもしれない。

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カツジ猫