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何だかなあ。

◇ネットで誰かも書いてましたが、最近オリンピックのニュースばかりで、スポーツ新聞かと見まがうばかりの毎日新聞が、さすがに夕刊のトップにしていた記事は、オバマ大統領がやっとこさ作ろうとしている核兵器を先制攻撃には使わないという政策を、日本の首相が「やめてくれ」と米司令官に伝えたとか。「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」とかいう理由らしいんだけど、正気の沙汰か。

福島みずほさんが、赤ペンでチェックしたところ、首相の長崎と広島の原爆忌の慰霊祭でのあいさつは、ほとんど文章が同じだったとかで、どうせその程度のやる気のなさなのだろうが、それにしても、世界唯一の被爆国(真上から爆弾を落とされたという意味では)の首相が、こんなこと言ってどうすんの。信義というか品位というか、愛国心の問題だろうが、こんなの普通に、まっとうに。

◇オバマ氏の広島での演説はいろいろ批判もあるし、彼がやったことだってさまざまな限界はある。だけど、その中で彼がめざしてきた方向は、ぶれていないし、ゆれてない。傷だらけで、不十分であるけれど、そこにはヒロシマで見聞きしたことを受けとめて生かそうとする、あいまいな演説のことばを少しでも具体化しようとする政治家の、人間の、矜持と情熱がたしかにある。

仮にも被爆国の首相なら、嘘でもカッコつけでも「わが国が仮に北朝鮮の核ミサイルの被害を受けることになったとしても、それでも70年前のあの惨禍を、他国の人に味合わせるようなことは絶対にやめてほしい」ぐらいの、大見得切って、はったりきかせるぐらいのことができなくてどうする。言うのも空恐ろしい罰あたりなことを言うと、世界唯一の被爆国って、日本が外交の場で切り札にできる、数少ない絶対的なカードだぞ。中国の慰安婦や南京大虐殺のことを聞きたくもないとか言ってるヒマがあったら、こっちもヒロシマナガサキを徹底的に強調して、世界の政治のリーダーシップを握らんかい。「ユダヤ人がホロコーストと言ったら何ももう言えなくなるわ」と、かの「セックスアンドザシティ」のシャーロットもハリーさんにゆうておったが、そのくらいの被害者の強みを振りかざして利用して何が悪い。それは人類を正しい方向に導く、あるべき利用のしかたなのだよ。慰安婦も南京大虐殺もホロコーストもヒロシマナガサキも。そういうカードはおたがいに、じゃんじゃん切りあわなくてはいかんのだよ。未来のために。人類のために。

◇それをまあ何なのよ。何て頭が悪いのよ。「北朝鮮が怖いですから、先制攻撃で核を使わないなんて言わないでください」なんて、申し入れるかね、被爆国の首相が。それは、「あの、おたくに落とされた原爆なんて、うちとしちゃ大したことじゃなかったんです、でへへ」と言ってることに他ならないし、いやしくも自国を守ろうとしている世界のすべてのまともな政治家、首脳から「こいつバカか」と思われることに他ならないと、どうしてわからないんでしょ。

百歩も千歩も一万歩もゆずって、北朝鮮がそんなに怖くて、アメリカに核を使ってほしいなと、ひそかに思っていたにしても、何でまあいったい、何が悲しゅて今の段階でゴキブリみたく、わさわさあわてて意見表明したり申し入れたり、手の内見せなきゃいかんのですか。アメリカ国内でも反対の声が強く、オバマさんは悪戦苦闘しているのだろうから、反対派にまかせておいても、そうおいそれとこの政策が認められるとは思わない。

もちろん本当はそこで、被爆国の指導者として、オバマさんを援護射撃して助けてほしいのはやまやまだが、もうあの首相にそんな甲斐性なんか誰も期待してないだろう。しかし、せめて、「ポセイドン・アドベンチャー」の旧作の方で、主人公が神に向かって「救えとは言わん、じゃまをするな」と叫ぶように、せめてそっとしておけよ。相模原の事件でもコメントひとつ出さなかったぐらいだから、できるだろ、そのくらいのほうっかむりは。自分と、自国が一番みっともなさをさらして損をするようなことを、何でわざわざやるかねえ。首相だか、その黒幕か知らんけど、その人たちの倫理観だの人間性だのは最低でも、政治的な計算やかけひきの基本まで、ここまで幼稚を超えて無知だとは思ってなかった。

◇わが家のネペンテスは、どうやらとうとう枯れてしまったようです。水をやりすぎたのか、日にあてなさすぎたのか、葉っぱを刈り込みすぎたのかわからないけど。カツジ猫と映っている、古い写真の中の、青々と茂った元気のいい姿を見てると、ちょっと悲しくなりますが、しょうがないですね。

◇ところで部屋で転んで病院に行った母ですが、昨日行ったらケーキも食べて、まあまあ元気だったので、一安心していたら、今日、お医者さんから電話があって、痛みがあるせいか、酸素が十分吸えていないようだとのことで、酸素吸入をしたほうがいいとのこと。ゆうべも何だかきつそうだったので、転んだ身体の痛みが出てきているのだろうと思い、今日行ったら、ヘルパーさんに着替えさせてもらっている時も、かなり痛がっていました。「さっきまでテレビを見ておられましたよ」とのことでしたが、ほぼ眠っていたので、持って行ったケーキは宿直の人にあげて、そっと帰ってきました。

母はもともと肺が弱いので、命取りになるならそこかなとも思うし、今日、寝ているときに一度「寒い寒い」と言いながら、毛布を押しのけるしぐさをしました。ふとんをかけてやって、さわってみたら熱はないし、身体は暖かだったので、まあ大丈夫だろうとそのままにしたのですが、そこでふと思い出したのは、もう何十年か前、入院していた祖母が死ぬ直前に、両手でふとんを押しのけるようなしぐさをしたそうで、つきそっていた母は、私に「そういうしぐさをしたら、人はもう死ぬらしいからね。おばあちゃん自身がたしか昔、私にそう教えた」と話したものでした。

私は祖母のそのしぐさを直接見ていませんが、どうも母の話では、今夜の母のあのしぐさは、それと似ていたのじゃないかと思います。やれやれ。祖母と言い母と言い、娘に聞かせたとおりのしぐさで死んで行ったら冗談にもならない。それにしても、今、母に何かあったら、私自身がどこまで対応できるか体力に自信がなくて、それがいささか心配です。というわけで、今夜はもう早めに寝よう。

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カツジ猫