何もなかったはずがない。
◇明朝までに返さなくてはならないDVDの最後の一枚「アルジェの戦い」をさっき見終わったら、濃いお茶を飲んだみたいに心が騒いで眠れなくなった(笑)。学生時代に一度映画館で見たのだが、こんなに映画としてもきっちり作られた作品とは思わなかった。
今も古いどころか、中東その他、大国に占領された地域では、同じことが起こっているのだろうと、ひしひしとリアルに伝わって来る。
最後の抵抗していた数人が消されたあと、数年後に突然爆発するように起こった暴動が、広がって行く映像でこの映画は終わる。その数年後にアルジェリアが独立するとナレーションがかぶさって。そこは印象に残っていたが、今見ると、その、原因もきっかけもよくわからないまま、一気に再燃した闘争というのが、絶対にそうなるまでに長い時間の大勢のいろんな努力や工夫や犠牲があったのだろう、絶対に何もなかったはずがないと、胸につきあげるような実感でよくわかる。
最後の場面は街路にあふれ出した民衆が、警官や軍隊の発砲や制止も聞かず走り回る中、手作りの旗を持ってはじけるような明るい笑顔で踊り狂う少女の一人の映像だ。それもよく覚えていたが、今回見て初めて気づいたのは、この映画、前半でも中盤でも女性がほとんど出て来ない。抵抗するのもテロをするのも逃げるのもとらえられるのも拷問されるのも処刑されるのも、インテリも労働者も老人も若者も指導者もその他大勢も、皆みごとに男性だ。拷問の場面で、「ジャミラよ朝は近い」で読んだジャミラ・ブーパシャと多分同じかたちで縛られている男性の姿を見て、ジャミラのように同じ目に会った女性もいるんじゃないかなとか思ったりしていた。
終盤になると、ちらちらと協力者や支援者の中に女性が登場し始めるし、逮捕されてもいる。これは計算されていたのだなあと気づいた。そして、ラストに街にあふれ出し、圧倒的な人数で軍隊を圧倒して行く民衆は、その大半が女性である。むろん男性もいるのだが、顔も姿もしっかり見せて、叫び、踊り、走っているのは、それまでまったくと言っていいほど姿を見せなかった、さまざまな年齢のアルジェの女性たちだ。圧倒された。どう考えて、どう解釈するかと言う前に、とにかくその事実に圧倒された。
まだまだ書きたいことはあるが、いくら何でもそろそろ寝ないと。