先進医療
◎さっきテレビを見ていたら、「報道ステーション」でTPPのことをとりあげていました。新聞など見てもそうですが、どうやら世論はまっぷたつのようですね。原発問題もそうでしたが、こんなになる前に、もっと議論をしなければならなかったんだろうに。
TPPのすぐあとで、ガンをロボットで治療する最先端の治療がとりあげられていて、そうか、こういう治療をするだけの金があればいくらでも最先端の治療が受けられるという、医療の自由化もTPPにかかわってくるんだったなと思いあたりました。
ただ私は自分は絶対金持ちではないと思っているのでね。大金を積んで治療を受けたい人、受けられる人はある意味、科学の発展のためにもいてくれていいですが、自分は最低の治療でいいから、その最低がそこそこは、よいものであってほしいと願うのです。
マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」を見るまでもなく、なぜか、こういう最高の先進のものが発展しますよというとき、それとセットになるはずの、「でも最低の水準はきちんと保障します」がなくなる。そして、実際にはよっぽどの金持ち以外はろくな治療も受けられない状態が必ず生まれる。
学問の世界でも、私は別にすごい援助や大金はいらないから、最低限の研究はきちんとつづけられる環境と予算を保障してほしかった。そうしたら、いつか偉大な立派な仕事を生みだせるかもしれない地道な調査や大胆な挑戦も、それなりにつづけられる。
しかし、やる気のある優秀な人材にしか金は与えない、そうでない者は切り捨てるという姿勢でやられると、当面成果の上がることに熱中するしかないから、逆に研究は画一化し小粒化する。そして、選ばれなかったものは、人でも仕事でも、結局大したものにならない。
すぐれたものを開発し提供しようというのなら、その一方で、どんな最低のものも切り捨てないのを絶対の条件にしなくてはいけない。そして、特にすぐれたものでなくていいという人たちに、そこそこのものをきちんと与えるシステムを保障しておかなくては、社会も学問もすべて崩壊する。
私は経済のしくみなんか知らないから、どうやったらそれが保障できるのかなんか知らない。ただ、確実に知っているのは、別に最新医療でなくていい、ものすごい予算などいらないから、そこそこに生存し研究できるようにしておいてくれれば、人間も学者も、いいことをするし、いい世の中をつくれるのに、そういうことを保障するのと、最高最新最先端の開発をするのとが、少なくとも大学改革ではまったく実現しなかった。TPPや医療や農業でそれがやれるのか、ものすごく怪しいと思えてならない。
◎愚痴を言いながらでも、私は進むことはやめない。今の状況は苦しいが、やれることだけは最後までやる。だが、大学や世の中全体の、弱いものや劣ったものや欲のないものを、きちんと大切にするということが、どんどんおろそかにされて行くのには、ちょっともう、私では手のつけようもない気がする。
だいたい、ふしぎでならないのは、誰もかれもが、自分は切り捨てられる側には決してならないと信じているらしいことだ。自分にそれほどの価値があると、どうしたらいったい信じられるのだろう。私なんか、絶対に自分は切り捨てられる側だと、いつも確信していて、その上で何とかそんな自分でも生きていける世の中にしようと、それを基準に、いろんなことを決めているのに。
◎明日から、工事のための大工さんたちが泊まるので、またへやの模様替えをしたので、カツジ猫は不安そうにしています。困ったねえ、ガラスのハート君。