六年生の夏(13)
これを読んでもわかるように、当時中学校二年生だったはずの伊佐子ちゃんは、家事を叔母(つまり母親)より、きちんとこなしていたのかもしれません。
8月12日 火曜 天候◯ 起床7時0分 就寝11時0分
図画 色をぬる
朝から買物に行って、帰って来たのは、四時半頃だった。まだ、図画の色をぬってなかったけど、今日、買ってもらった本を読んだ方が面白そうだったので本を読んでいた。そのうち、5時近くになったので、あわててパレットを持ち出して色をぬり始めた。しょうじを半分ばかり、ぬった時、伊佐子ちゃんが「おつかいに、ついて来てやらん?」と、来たので、一しょに行った。帰って玄関の戸を開けようとすると、どうしても開かない。行きがけに、少し、乱暴にしめたので、かけがねがかかってしまったらしい。
「南生子おばちゃーん。」「あけてェ。」「戸がしまってるのよゥ。」私たちは口々に呼び立てた。おばは、落ち着いたものである。「ああ、ちょうどいい。伊佐子ちゃん、しょうが、どこにあるか知らん。」「流しの上の戸だなよ。早くあけてェ。」「それからね。麦茶は左のびん、右のびん?。」「右よ。」「ああ、そうね。」それから、やっと戸があいた。図画はとうとうぬってしまえなかった。
従姉の方言は博多や筑豊あたりのが入り混じっているのかな。「やらん?」は「~してくれない?」って感じかな。
これはまだ若い叔母。田舎の家に近い線路のそばじゃないかな。