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六年生の夏(3)

さっき外に出てみたら、それは美しい金貨のような月が出ていました。夜は気のせいか、少し涼しくなってきているようです。

さて、六十五年前の今日はというと…。私の日記より。

8月1日 金曜 天候● 温度27度 起床六時〇分 就寝十一時三十三分

今日、南生子おばちゃんの所へ海水浴に行く予定だったがまだ、習字の練習もしていないし、たった一日行ったって、つまらないから、行くのはよしにした。そのかわり、習字大会や、図画講習がすんだら、一週間か二週間行く事にした。そこで母に、「そういう予定にしたが、さびしくないか。」と聞いたら、「あんたを、ほうり出したら、ゆっくり出来るから、さびしい所か、ロカビリーを踊りたいくらいうれしい。」と言った。
夕方、習字をした。字は、そうまで悪くないのだが、名前は十級の下の下の下ぐらいなので一生けんめい練習した。それにもかかわらず、あまり、たいした字は出来なかった。いい字が出来ないと、する気にならない。明日、又、する事にして、すぐに、片づけてしまった。外には、いつの間にか、雨がふっている。だんだんひどくなってテレビを見るころには、雷まで鳴り出していた。でもこれで稲がいくらか助かるだろう。

実は家の片づけをしていると、母がとっていたらしい、私の小学校時代の習字の紙がひとかかえ出て来て、こんなの母は何でとっといたんだろうと首をひねりつつ、つい捨てそびれていました。でも、この日記を読むと、当時の学校では習字教育が盛んで、私も毎日のように練習していたのですね。今はその名残りもない、ひどい筆跡だし、完全に忘れていました。六年生のときのは見つからなかったけど、五年生までのはそこそこありました。捨てないでいてよかったかも(笑)。

ロカビリーなんて、今の人はもうわからないかな。今のロックミュージックみたいなもので、当時はなかなか盛んだったのですよ。

最後で唐突に稲の心配をしていますが、当時はわが家の周囲は一面の水田。そこをわたってくる風は冷たくて、エアコンもなく扇風機だけでも、ちっとも困りませんでした。そして、農村で同級生もほとんど皆農家でしたから、米麦の出来には子どもでも普通に敏感だったのです。

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カツジ猫