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原作「ペリリュー」のラスト

映画「ペリリュー」の原作のコミック本、Amazonで一気買いしたあと、近所の本屋で新刊の十巻を買い、更に最終巻の十一巻があるのに最近気づいて、急いでそれも買って読んだ。

十巻までの主人公が、パラオの戦場だったペリリュー島から帰り、家族を作って年老いた後、孫にあたる青年が、祖父の話を聞き、ペリリュー島を訪れ、戦友たちの話も聞く、現代の話となっている。

ちょうど選挙の投票日前後で、私なりにいろいろと荒々しい思いにかられていた。それよりもはるかに深刻な内容でありながら、この漫画は、自分の激しい心がどこかでかすかに恥ずかしくなるぐらい、穏やかで、暖かくのどかで、しかも祖父の時代の戦場の描写と同様、歴史や世界の厳しく残酷な現実、私たちが生きている深刻な世界を、深々とえぐりとっていた。

ネタバレになるから詳しくは書かない。だが、ラストに近く夢の中のように突然登場する巨大なワニの姿が、妙にもう印象的で大好きだった。何を象徴しているのかもわからない、恐怖や嫌悪ではないのだが、ある諦念や畏敬も与えるような、その姿が、なぜか胸をつまらせた。救いや浄化のようなものさえ感じて、いつまでも忘れられそうにない。あらゆる運命や悲劇をのみこんで行くような、波の音さえ感じた。

映画の地獄のような戦場の、楽園のような動植物の色鮮やかな美しさは、モノクロのコミックにはない。読む前にそのことに不安を感じたが、ちがったかたちで映画と同じ豊穣さをコミックはちゃんと私に伝えた。その最後にして最大のものが、あのワニだったのかもしれない。

ひとつ、つけ加えておきたいことがある。
 私は、この作品の感想を、ネットでは映画を見たあとで、つまり映画の感想のハッシュタグしか見てないのだが、そこで書かれた感想のいくつかで、印象に残ったのは、若い人たち(多分)が、「今の時代と変わらない」「現代と同じだ」というような感想を書いていたことだった。むろん、映画そのものには感動し、評価もしている上での感想である。

生き残って抵抗している兵士たちの一団の、すぐれた指導者による軍隊組織の規律や統制、自由のなさが、現代社会の会社組織を連想するということのようだった。そうだろうなと納得しつつ、そのことに、重苦しい予感も抱いた。

選挙について、ある若い人(と言ったって、私にくらべるとだから、もう中年だが)と話したとき、しっかりした考えを持ち、流されない考え方をする彼なのに、現政権や高市首相への警戒心や危機感があまりないので、「軍備や防衛や戦争に抵抗感がない人のようだから、すぐに憲法変えて徴兵制をしきかねない」と言ったら、彼はどういうか、ことばで反論する以前に、この人何をとんでもない空想をしているんだと、とまどってしまったような反応をした。そして、くり返したのが「だって今の若者が徴兵なんかされたって、行きますかね、戦争に」ということだった。

この人にしてそうだから、今の若い人たちは、まったく普通に「徴兵なんか誰も行くもんか、拒否すればいい」と、漠然と強固に思っているのではないかと思った。まあ、たしかにそうでなければ、現政権の戦争へののめりこみに、あんなにのんびりしちゃいないわな。

でも、その一方で、酸鼻を極めた地獄の戦場の軍隊の話を見て、とっさに「今と同じ」「現代と変わらない」と実感しちゃうわけですよ。今の社会や職場のことを思い浮かべて。それに抵抗するすべもなく、受け入れてしまうしかない、自分たちの現状を連想して。

結論。徴兵制が実施されたら、誰も抵抗できません。反抗も拒絶も逃亡も。
 今の若者は、徴兵されたら、行くんですよ。

そのことを、実感します。私と話した彼に、断言したいです。

写真は最近、久しぶりに買ったブレスレット。どことなく、ペリリューの海の色とか思い出して。

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カツジ猫