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回転ずしと悪徳勧誘業者。

◇昨日だっけかの「江戸文学史」の書棚で、近松の浄瑠璃の項目をツイートして下さった方が、「最近の文学部の学生は平家物語も知らないの?」と驚いておられる。そーなのよー。もっとも正確には文学部じゃなくて教育学部、平家物語そのものじゃなくて、あらすじと内容なんだけど、まー、あんまり言いわけにはならんわな。

その授業が昨日あって、まだ多分選挙権はない学生が多いんだけど、「選挙権がある人は投票に行きなさいよー」と言っておいた。「選挙は回転ずしとはまるっきりちがうんだからねー。回転ずしなら、好きなのや食べたいのがなかったら、見逃しても見送っても別にかまわないけど、選挙の場合、気に入る候補がいなかったらからって投票しないでいたら、えらいことになるんだからなー。食べたくないものを、むりやり口にねじこまれても文句は言えなくなるんだから」と、つけ加えてしまった。

ほんとは、それにつけ加えて、「悪徳勧誘業者は、こちらが『けっこうです』と断っても、『けっこうと言ったんだから買うということだ』と言って品物を押しつけるらしいが、棄権してたりしたら、『支持したんですね、認めたんですね、全権委任したってことですね』と解釈されて、何でもしたい放題されるのが昨今の風潮だからな。たとえ投票した候補が当選しなくても、自分の意志はちゃんと示しておかないと、『いやだと言わなかったからレイプじゃない』みたいなことにされてしまうんだから」とも言いたかったけど、時間がなかった(笑)。

もっとも、私が子どものころ、村の選挙では国政も地元も問わず、ものすごい買収があたりまえみたいになっていて対立候補どうしの数人の候補者から金をもらっていた人も少なくなかった。買収した家に、対立候補が買収しかえしに来ないよう、一方の陣営の若者たちが田んぼのあぜ道で夜中まで見張っていて、やって来た相手方とけんかになって田んぼに落ちたとか、そんな話はいくらでもあった。日本全国、特に田舎ではどこでも皆そうだったはずで、その結果投票率はすごく高かったんだから、いちがいに今の人たちが意識が低いというわけでもない。

それにしても、私の周囲の人たちは、選挙の話になるとほとんど誰もが「安部さんのやり方はおかしい」「自民党に議席をやりすぎた」「麻生さんの発言には頭に来た」とか言うんだけど、それで「選挙には行こうかどうしようかと思ってる」と続くことが多くて、その前段と後段のつなぎ目が私には見えなくて、怒るより先に目まいがして来る。社会や政治の現状に対して怒って選挙なんか生ぬるいとか言って、テロに走ったり武力革命を志したりしているんなら、まあわからんでもないが(賛成してるわけではないよ、くれぐれも)、そういうことは何もしないで、おとなしく交通信号守って会社に行ってごはん作って、従順に市民生活してるんなら、その不満や怒りのはけ口は選挙の投票以外何があるというのだろう。それとも夜な夜な黒魔術の儀式でもして世界や日本を変えるべく、身を粉にして努力してるんだろうか。だったらごめんよ、知らないで。

◇投票に行かず、「政治に失望しました」とぐれていたら、「すみませんでした、ちゃんとします」と心根をあらためてくれる政治家が、どこかにいるとでも思ってるのかね。新聞を読んでると、前の選挙やその前の選挙で、民主党やら第三極やら、いろんなとこに期待したけど、何も変わらなかったからもう絶望した、しらけた、やる気をなくしたと言っている人もいて、悪いが胸がムカムカして来る。一度や二度の期待や裏切られで絶望して政治に無関心になるって、どんだけ甘い生活して来たんだろう。受験勉強やカラオケやゴルフの練習だって、もうちょっとは気長にやるんじゃないのかい。

アメリカの黒人、全世界のユダヤ人、女性たち、その他もろもろ、しいたげられてふみにじられた人たちが、ささやかな権利をかちとるのに、どれだけ長い年月と途方もない犠牲を払ってきたか、考えてみるがいい。今の私たちが普通に平等に権利を保障されて生きていられる土台には、そのために戦ったどれだけの人の血や肉や骨が埋まっていると思ってるんだよ。選挙権だってそうだろが。英国で女性が参政権得る戦いの中で、競馬場の馬の前に身を投げて抗議の自殺をした女性もいたんじゃなかったっけか、たしか。昔、何かのテレビ番組で、その時の映像が流れて、ぴこぴこ変な具合に動く昔の古い白黒フィルムで何が何だかわからないような画像だったけど、私は今でも忘れない。

私は別に民主党のひいきじゃないが、自民党も国民も、一回政権とって、あまりうまく行かなかったところもあったからって、民主党が無能で非道なように言うのは明らかに度がすぎるだろ。民主党政権下で最大の混乱を招いた原発事故は、もともと自民党政権の間に作った原発政策の結果だったってことも皆忘れてるんじゃないのかい。景気だって、民主党政権下の短期間によくならなかったからって、その前の長期間自民党政権下でもずっとよくならなかったんだろうに何言ってんだか。

◇私は経済のことなんかわからないし、朝日新聞をめったたたきしていた週刊誌は最近ではアベノミクスたたきを始めてるみたいだから、まあ首相の経済政策は成功してるとは言えないのかもしれないけど、仮に一部景気がよくなって成功してるように見えるにしても、以前に橋下知事が大阪府の赤字を一気になくして、その功績は認めないわけにもいかないのかなと思ってた時、近所の女性の市議会議員さんが吐き捨てるように、「どんなことでもしていいんだったら、赤字なくすのなんて簡単ですよ」とばっさり切り捨てたのを思い出す。弱い者をかばいながら、誰も犠牲を出さないようにしながら、進んで行くからこそ誰も苦労するので、それを気にしないでいいのだったら景気をよくするのも国を守るのもそりゃ簡単でしょうが。

まあいい、話を元にもどすと一度や二度、期待を裏切られたからって、そんな簡単に絶望し、無気力になるのなんて、シロウト、初心者、というよりも、初めからそうやって絶望して一生怠ける口実にしたかった確信犯としか私には思えない。結局そうやって、自分の生きる世の中を不快に不幸にして行くのだから別にいいけど、そうやって不幸な不快な国と世界を作ったのは自分自身でもあるのだから、せめてもう、あんまり被害者ぶらないでほしい。無垢で無邪気で傷つきやすい大衆のポーズとるカマトト(死語かな)な人ってほんとに嫌いよ。ネトウヨの人たちだって、それよりはまだしも、孤独をかみしめながらがんばって続けてるんじゃないかしら。

◇とは言うものの

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カツジ猫