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変わるでしょうか。

◇テキスト作りの、いいアイディアが浮かんだので、起き抜けにそのままパソコンの前に座ったら、ついネットで昨日の会談のニュースいろいろについての感想に読みふけってしまう。

中に、ANTIFA大阪さんの、次のような書きこみが印象に残る。

「(この和平会談を評価し喜ぶにあたって、中国外交官が使った漢詩について)中国の外交官が引用したのは、1932年の上海事変後、日中が再び歩み寄れることを祈願して日本人の生物学者が描いた鳩の絵に魯迅が題三義塔と題して揮毫した詩の末節。中国は、朝鮮半島の紛争終結を歓迎しつつ、日本にもメッセージを投げている。この外交力に対して、日本のなんと貧相なことか。」

「ちなみにこの日本人生物学者は西村真琴。俳優・西村晃の父であり、『帝都物語』にも出てくる東洋初のロボット『學天則』を作った人。上海事変後は日中友好と、中国の戦災孤児救済にも尽力した。日中戦争から太平洋戦争に至るなかでは、どれほど無念だったろうか。」

それは知らなかったなあ。まだまだアジアのことを私は知らない。
西村晃って、テレビで水戸黄門やってた人ですよね。新劇人で、「赤旗」によく登場していました。たしか昔、共産党の議員でテロに殺された山宣こと山本宣治の映画でも主役をやった人じゃなかったっけ(←あ、それはまちがいでした。でもいい映画なので、よければ見て下さい。「武器なき戦い」ってやつ)。そんな家系のかただったのね。
ANTIFA大阪さんは、こうも書いている。

「今日、軍事境界線の向こうから金正恩氏が文在寅大統領に歩み寄って話しかける姿を中継で見ていて、『そうか、通訳が要らないんだ…!』と気づいて、鳥肌が立ちました。同じ言葉を喋る、同じ民族なのです。半世紀以上もまるで別の惑星の住人のように暮らしていても、同じ国土に住む同胞なのです。」


◇私は実は韓国映画もドラマも何だか苦手で、名作と呼ばれる作品も全然見ていないのだが、ちょっと面白そうでDVDを借りて見た、北朝鮮のスパイたちの疑似家族の話ひとつで、「ああ、韓国って、北朝鮮を決して嫌いじゃないんだ。結局は同胞で家族なんだ。そりゃそうだよなあ」と痛烈にわかった。
アホな政府の言うままに、異星人の怪物のように北朝鮮をイメージしている日本人の多くとの、この温度差と乖離は、ものすごく将来、日本にとって危険だぞとも感じた。

◇何しろ、九条の会その他で署名や街宣をしていると「北朝鮮はどうするんだ」と、狂ったようにつっかかって来る、主として男性がよくいて、恐くてびびって、男の人には署名をとれなくなったと言っている奥さま(で、代わりに女性ばかりに呼びかけて、あっという間に十数名の署名をもらったらしいから転んでもただでは起きないというか、立派だけど)もいたりする。だから、「北朝鮮問題を何とかしないと」「きちんと回答し説明できるように勉強しないと」という声が、九条の会なんかではいつも出る。

それで実は5月には教育大の政治学博士の先生を招いて、北朝鮮問題について講義していただくことになってたのだ。
まじめな若い先生で、きっと今ごろ資料の追加やら何やらで、大忙しなのじゃあるまいか(笑)。

もちろん、どなたでも参加できる勉強会なので、また日時など、ご案内します。

◇私は街頭署名や街宣には忙しくて、このごろほとんど参加してない。だからそういう狂ったような北朝鮮攻撃にこりかたまった方々とは遭遇する機会がないが、皆の話を聞くだけでも、こののんきな地方都市でも、北朝鮮に原爆を落として滅ぼせみたいなことを普通に口にする人たちが、生まれて来ているのは知っていた。

私自身は、原発や何かの講演のなかで、ちょっと聞きかじった話からだけでも、そして昔の北朝鮮の記憶からだけでも、基本、あの国に敵意も恐怖も感じなかったし、感じる必要もないと思っていた。

これ、かすかな自慢と思ってもらってもいいけれど、だから世間もマスメディアも北朝鮮滅ぼせ一色だったころ、九条の会のチラシに、私は次のような一文を書いた。

国が消える恐怖 


 KBCシネマ北天神で上映していた「ハイドリヒを撃て!」という映画を見てきました。第二次大戦中、ナチスドイツが占領しているチェコスロバキアで、ヒトラーの重要な片腕として残酷な弾圧を行っていた高官ハイドリヒを暗殺しようとする、抵抗運動の人々の話です。

 大きな犠牲も出るだろう危険な計画に反対する仲間もいます。しかし、連合国がチェコを同盟国と認めずナチスの占領を許してしまっている中、このような計画を成功させて連合国にアピールしなければ、チェコという国自体がなくなってしまうのではないかという、メンバーの皆の、愛国心と言うには切実すぎる心情もまた、映画からは強く伝わってきました。


 私は愛国心ということばには、あまりなじみがなく、使ったこともありません。どちらかというと嫌いかもしれません。でも、この映画を見ていると、自分の国が消えてなくなるかもしれない危険がせまる恐怖や不安を強烈に意識することがなく、愛国心をあまり持たずにいられる幸せをあらためて思いました。


 その少し前、小出裕章さんの原発についての講演を聞きました。講演の中で、北朝鮮について、小出さんはこんな風に話しました。
 「僕は北朝鮮とは言わないで、正式名称の朝鮮民主主義人民共和国と必ず言うことにしています。もちろんいろいろ問題はあります。しかし、そもそも朝鮮戦争はまだ終結していなくて、朝鮮民主主義人民共和国は、アメリカと停戦協定を結びたいという姿勢を何度も見せているし、それは今でも変わっていない。しかしアメリカは絶対にそれを結ぼうとしない。もし、停戦協定が結ばれてしまったら、東アジアにアメリカの軍隊をおいて日韓と安保体制を作る理由がなくなってしまうからです。この地域に介入し軍隊をおいておくためには、こうして戦争状態を維持しておくことがアメリカの望みなのです。
 そうなると、朝鮮民主主義人民共和国としては、常にねらわれ、攻撃される恐れがあるわけだから、それは恐ろしいし警戒せざるを得ない。その結果こうなっているということを私たちは理解しておかなくてはなりません」



 そうなのか、と私もあらためて歴史を調べたら、その通りでした。
 世界の最強の大国とまだ平和条約が結ばれず、何の安全の保障も与えられていない国。周辺の韓国と日本も全面的に協力する大国の都合ひとつで、いつ消されるか滅ぼされるかわからない不安にさらされ続けている国。
 ミサイルの恐怖に心を凍らせる前に、私たちは「朝鮮民主主義人民共和国」の人々の、その緊張と不安におおわれた長い歳月と日常に、わずかでも思いをはせてみるべきではないのでしょうか。(2017.9.5.)

◇まるで過激でも何でもない文章のつもりだったのに、何といつもチラシを作っている九条の会の事務局長は、北朝鮮を理解しようとするその内容にびびってしまって、虫メガネでも見えないほど、小さい文字で掲載した。

私は驚いたしあきれもしたが、第一線でがんばって署名や街宣をしている、その人だからこそ、私のこんな文章でさえ、一般の人には受け入れられないだろうと危惧するほど、世間のネトウヨ化は進んでいるのかと、ありありと知った思いだった。

◇そんな状況は、これからどう変わるのだろうか。変わらざるを得ないだろうが。
はっきり言ってアベ内閣の狂った洗脳にだまされていた、日本の国民たちは、ともすれば私たちにつっかかって来た「北朝鮮には何してもいい」信者のおじさんたちは、昨日のニュースをどんな思いで見たのだろうか。
百田氏などは、あの映像の金氏は替え玉だと、まじめにツイッターで書いていて、もう、その世界と現実からの取り残され方に、こっちがびびる。闇は深い。根も深い。しかし、それにまさって、良識と常識と人類愛の根もまた深く広く、世界にはりめぐらされている。

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カツジ猫