愛してないだろ。
◇もともと、うなぎを食べるのはわりとというか、かなり好きな方だったのに、例の鹿児島県志布志市の超気持ち悪い美少女うなぎCMを見てしまってからというもの、冗談でなく、うなぎと聞いただけで吐き気がしそうになってきて、食べられるかどうかも心配になってきた。食べているときに、あの薄気味悪いCMを絶対に思い出すにちがいないのが決定的だ。そういう点ではインパクトがあって印象に残るという意味では、CMとして優秀な作品かもしれないのに、惜しいっちゃあ惜しい。
私のような人間が、そうそう多いとは思わないが、あれはうなぎ好きな人口をたしかに少しは減らしているよね。それとも、あれ見て、「うなぎ食いたい」と思う人っているのだろうか。
めっちゃ唐突だが、昔「マスター・アンド・コマンダー」の映画のきもちわるーい、でたらめ予告編で映画が台無しにされかけたことがあって、激怒した映画ファンの皆さんとともに抗議行動をくりひろげたものだったが、あの時一番腹が立ったひとつは、人さまの作った映画にのりうつって、自分の好みの予告編を作って、チンケな創造力をたれ流して人に強制してるような卑怯ないやらしさだった。
今回のうなぎCMにも、ちょっとそれと似たとこがあって、もちろん何べんも見たわけじゃないが、頭の中で再生しても何よりいやなのは、本当に志布志市のうなぎをたくさんの人に食べてもらおう、そのおいしさを紹介しようという志があのCMには、意外と全然ないことである。
志布志のうなぎに便乗して、自分のお粗末なセンスを思いきり発揮して、そこそこうまい映像を作って喜んでる自己陶酔の匂いがぷんぷんする。おいしい蒲焼とはあまりにちがう、腐りきった三流五流のけち臭くて浅ましい芸術家気取りの、いやーな匂いだ。
昔、ミレー展だっけを見たとき、緑の背景に黒に近いこげ茶色の大きな馬がたてがみを風にうずまかせて立ってるような、すごく迫力のある絵があって、ひきつけられた。でも解説を見たら、それって、金のために描いた獣医の看板か何かだったらしい。
(多分、これかな。もう記憶もおぼろなんだけど。http://www.canvasreplicas.com/Millet130.htm)
そういうこともあるのだから、別にうなぎのCMで、自分の芸術家精神を発揮したって悪いとは言わない。いい結果になることだってあるだろう。
でも、あのCMは、そういう点では、そうなっていなくて、それは結局、志布志もうなぎも好きではなくて、どうでもよくて、自分の映像をそれにひっかけて、うまく作って認められたいという、めっちゃカン違いの、まるでプロではない精神が貧相でいやらしいのだろうと思う。
うなぎを愛してるCMじゃないよ、あれは。どう考えても。
そう考えると、あれでうなぎ嫌いになっちゃ、志布志市にもうなぎにも気の毒だから、やっぱりあんなCMは忘れて、蒲焼はおいしくいただくように頭を切り替えなくちゃな。
◇そりゃそうと、その「マスター・アンド・コマンダー」の主役だった、ラッセル・クロウの新作映画「ナイスガイズ」が来年2月に公開されるらしい。遅すぎるよと言いたいが、公開してくれるか心配だったから、それはまあうれしい。大画面だか中画面だか知らないが、とにかく映画館で見られそうだ。なかなか面白そうな内容でもある。
http://www.niceguys-movie.com/
◇昨日あっちこっち走り回ったせいで疲れて、今日の予定の仕事が全然進んでいない。石にかじりついても、今日中に講演のための資料を作ってしまわないといけない。がおー。
夕方、花屋さんに寄って、かねて買いたかった、びろうどみたいなぶあつい花びらの鶏頭の、ピンクと黄色の二種類を買おうとしたら、おまえはそれでも鶏頭かみたいな、真紅でまんまるの鶏頭があって、珍しいからお店の人のすすめるままに、そっちを買って、玄関に飾った。お店の人が「カツジ君にお祝いに」と言って、深いピンクのモカスイートとかいう、かわいいカーネーションをくれたので、それもへやに飾った。最近、少し花を買いすぎで、倹約しなければと思うが、品物はものが増えるし、食べ物は体重が増えるし、ストレス解消の買い物は、結局、花が一番いいっちゃあいいのだよね。
◇世の中の動きになかなかついて行けてないが、池田清彦さんのツイッターが例によって、いろいろいい記事を選んで紹介してくれてるので、さしあたり、これを。ときどき思うのだが、このピックアップのうまさ、的確さは研究者ならではなのか、ジャーナリストにしてもいい才能かもしれない。