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「映画 無法松の一生」の切なさ

ありとあらゆる、すったかもんだかをくり返しながら、何とかかんとか確定申告が終わる。やってみれば大した作業ではないのだけれど、年に一回なので要領がわからなくなっているのが、ややこしい。特にもう、こうやって収めた税金が、何もいいことに使われていないどころか下手すりゃミサイルの代金になるのかと思うと、さっぱりやる気が起こらない。

しかもその中、昨日が最終日の「午前十時の映画祭」の旧版の「無法松の一生」を見に行く。特別な解説もついていて、やはり映画館で見てよかったとしみじみしたが、いろんな意味で切なかった。軍部の要求でカットされた車夫松五郎と軍人の未亡人とのほのかな恋。あまりにも美しいヒロインの吉岡夫人を演じた園井恵子の原爆での悲惨な死を「さくら隊散る」の映画や本で細かく知っているから、これがまた悲しい。そして解説の中にあった、出征前夜にこれを映画館で見た学徒兵の手記。運動会や提灯行列の描写に心を躍らせ、そんな日を味わうことを夢見、戦争があまりに重いと書いた彼は結局ビルマで戦死した。ずたずたにカットされていても、だからこそと言いたいほどに燦然と画面からほとばしる生命力と香気。これを入隊直前に見た若者の思いが、おののくほどに伝わってきて、苦しくてならない。

新版の三船敏郎主演の同じ映画が明日から始まる。こっちは見る気はなかったのだが、阪妻の演じた松五郎が魅力的すぎる一方、これはたしかに三船のキャラだわいと思うと、つい見てみたくなっている。

そんなこんなで、仕事の合間にだらけてた間に、垣谷美雨の「うちの父が運転をやめません」と山口恵以子の「食堂のおばちゃん」シリーズの新刊二冊を、あっというまに読んでしまった。前者は話題のテーマをとり上げながらキワモノにはならず、広い視野と多分ていねいなリサーチ、前向きで暖かい視点などなど、若年層にも人生や将来を考える楽しい読み物になっているのがさすが。後者の二冊もレシピの参考になるだけでなく、バランスのとれた人生観に裏打ちされているのが、いつもながら心強く安心して読める。
 ただ、わかっていたのだが、どちらも読みやすく内容も快いため、それこそ流れるように読んでしまって時間つぶしにさえならない(笑)。もちょっと時間をとられる本はないかとそのへんをひっくり返したら、何冊か歯ごたえのありそうなのが転がりだしてきたので、それで間に合わせることにする。

とか言ってたら、決して悪くないのになぜかめちゃくちゃ時間がかかった、ネレ・ノイハウスのミステリを、時間をとる点ではコスパがいい(笑)と、文庫本全冊買いこんだのが今日届いて本屋からひきとってきた。お金も時間もないくせに、よーやるよもう私も。

そんな気分で花屋さんに行き、華やいだカーネーションもほしかったが、ちょっとひかえめなほのかな色のスターチスが何だか気持ちにあって買った。ドライにもなるらしいから、それも楽しみだ。

庭のユキヤナギは本当に豪雪のように咲き誇り、金網の中のスノードロップもいきなり満開。それはうれしいが、多分この下にあるクロッカスが全然見えなくなって、どうなったやらとあせっている。

深夜放送で、NHKに関する国会中継を聞き流していた。放送法もさることながら、一人暮らしの学生には受信料を無料にすることにしたらしいというのを聞いて、本当なら喜ぶべきだが何だか陰鬱になる。放送法でしばられまくった今のテレビ番組は、異常なほどに政府よりだ。これを流しまくれば高齢者も若者も自然に政府の広報を朝から晩まで聞くことになるとふんでるんじゃないかと、つい疑心暗鬼になってしまう。

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カツジ猫