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映画「ゲド戦記」感想。

例によって、だらだら長いし、しばらくは映画の感想にも行きつかないおしゃべりになると思うけど、悪く思わないで(笑)。

むかーしむかし、原作の小説は読んでいて、でも多分第二巻の「こわれた腕環」まではちゃんと読んだけど、第三巻「さいはての島へ」は怪しいし、最終巻「帰還」は絶対途中で挫折してたと思う。今回初めて、きっちり全部読んだ。

で、「阪急電車」の時と同じく、原作のこと言いだしたらまたいつ終わるかわからないから、そこそこにしとくけど、あらためて思った、何ちゅう、うっとうしい小説なんだ(笑)。(←別に悪口ではない。)

第二巻までは前にも言ったように、ちゃんと読んだのだけど、今回あらためて読んでみて、一人の少女が洗脳され偶像にされて行く(と、あっさりまとめていいもんか、多分よくないんだろうけど知るかもう)過程を、ほとんど前半全部かけて、こまめにじっくり描きこんで行く、この精神って何なんだ。そりゃ別にこんな文学があってもいいけどさ、どう考えても作者あきらかに病気だろ(あ、もちろん、病気でも別にいいんだけどさ)。

あの過程は彼女(作者)絶対、好きで喜んで書いてるとしか思えない。まあ、そうじゃなきゃ困るってこともあるけどな。読んでて何という気味悪い話を嬉々として微に入り細に入り書くんだあんたはと、げんなりしっぱなしだった。
後半のそこから解放される過程もまた、妙にとことん、あらゆる意味で病的だしさ。まー、人が人を解放する話なんて、どうせそうなるのはしかたがないけどさ。何かこう、あのその、もう、一口には書けないいやらしさが、全体にみなぎって、それはそれで感心したなー、まーいいけど。

ちっ、結局もう、小説の感想になってるやんけ。

実は、どこまで読んでたか、はっきり覚えてなかったから、私、最後の「帰還」から読み返しはじめたのな。んで、途中からイライラしはじめて、後半から最後に至って、決定的に何だもうおまえは、バカにすんなとヒロインにどなりたくなった。
この作者は「闇の左手」という有名なSFがあって、それも昔、一応は読んだ。これは萩尾望都さんの作品にも大きな影響を与えたということで、たしか有名だった。両性具有とか、そういったことで。
それからもわかるように、また、この「帰還」ではかなりはっきり出ているように、作者はフェミニズムとか、男女の性とか、そういうことに強いこだわりを持っている。

私だって、めちゃくちゃこだわってるから、それはよくわかる。わかるんだけど、男女でも人種でも障害者でも何でもいいが、そのこだわり方というか、戦い方というか、訴え方というか、それがこの作者の場合、読んでいて楽しくない。
まあ、差別の何のということは、現実に楽しくないから、それを描いて楽しくあろうはずはないというのはわかるが、どうもなあ、それだけじゃない。

「帰還」のヒロインは、大きな力を持ったある種の魔女だが、彼女はその力を使う生き方を拒み、普通の、平凡な女として生きる。あ、いまさらですが、もう全部ネタばれですけんね(笑)。
あのなー、でも私そこがなー、そういう生き方も絶対ありだと思うし、いいんだけど、この人がそれで幸福になってると思えんのよ。
そして、この人の本性だか本質だかを知らんままに夫婦として生きて先に死んだ旦那や、子どもたちも、どういうか、すごくバカにしていると思うのよ、この人は。

魔女(とめんどうだから呼ぶけど)としての才能をかくして、殺したまま、平凡な普通の主婦として生きたなら、そういう人間としての進化や成長や充実がちゃんとあると思う。だいたい、平凡な普通の主婦って、それ何よ(と、自分で書いといて言うけどさ)。そんな存在、実際にいるわきゃない。
魔女がそれぞれちがうように、主婦もそれぞれちがう。第一、主婦を選んだ時点で、もうこの人は魔女なんではない。それをずっと「私は魔女だけど、魔女じゃない、普通の女だ」と自分に言い聞かせて生きてきたかに見える、この人の傲慢さと怠惰さと、その結果もたらされた不毛と不幸に、私は慄然とするし、心がずっしり重くなる。

何かこう、さらにイヤなのは、この小説が、そういう生き方した魔女の限界や悲劇として描かれてるならいいけれど、作者もそれには気がつかず、この女のいやらしさと哀れさを、気づかないまま描いているように見えることで、私は作者と作品はまったく別とかねがね思っちゃいるけれど、こうなるとつい、いったいあんたの人生は、どんなものだったんじゃいと、あらためて聞いてみたくなる。

この作者は女性差別に抗議してるようだけれど、いったい女性が好きなんだろうか。男性が、人間が、好きなんだろうか。もちろん、きらいでもかまいはしないわけで、そこにこだわった文学を書けばいいのだろうけど、彼女自身が、そのことをいったい考えたことがあるのだろうか。

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カツジ猫