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映画「コクリコ坂から」感想。

この前、「コクリコ坂から」を見てきました。うまくバランスがとれていて、快い映画でした。同じ監督の「ゲド戦記」も見てみよっかなー。
何もかもが、ほどよいんですよね。それでいて、不完全燃焼でもなく中途半端でもなく。「ポニョ」や「アリエッティ」より私はこっちが、ずっと好きです。
まー、「となりのトトロ」のちょっと年長者版、という感じもあるんですけどね。レトロな昔なつかしさに精魂こめて描いてるあたりとか。でも、それもうまくできてたと思います。

どって話があるわけでもないんですが、ヒロインが一番深刻に悩み苦しむ原因が、彼女の父親のいかにもあの時代らしい乱暴で雑で勢いにまかせたヒューマニズム&友情の産物ってあたりも、制作陣にその気はないとしても、ちょっと皮肉で見ていて苦笑いしました。そーよなー、周囲や後の世代のことなんか考えず、正しいこと優しいことするやつが平気で存在した時代なんだよなー、よかれあしかれ。

以下は大ネタバレなので、見てない方はご注意を。
2ちゃんねるあたりでは、彼女が「兄か?」と悩む相手は実際に父親の浮気相手の子じゃないかとか結局近親相姦じゃないかとかそんな題材あつかっていいのかとか騒いでる人もいるみたいですが、何かもー、甘いよなー、団塊時代(あ、そのちょっと前か。でもあの父親の精神は私らの世代まではけっこう残ってると思うのよ)への怒りのつっこみがさ。

まーさ、話のつうか映画の作り方から言って、あれは父親の子などではない、親友の子なんでしょうが、「そんな都合のいいハッピーエンドは許さない」みたいな感じで、浮気相手の子云々の、どう見ても無理のある解釈でうだうだ言ってる人たちを見ると、なんかもう、えーい、ツメがあまい、攻めが弱いといらつくなー。私がいらついてどうすんだって話ではあるけど。

あれはさー、死んだ親友の子をかわいそうだと連れてきて、自分の子としてまた別の親友に押しつけるっちゅう、そこを認めた上で攻撃せんといかんのではないかね。たしかにそれは美談だよ、そしてあの時代は男女をとわず、そのようにむっちゃくちゃで、はためいわくな「いいこと」をけっこう誰もがやりかねなかった、事実やってもいたのですよ。

私はそういうの嫌いじゃない。しかし、それがたとえば今回のヒロインの少女の場合のように、ものすごーく迷惑な結果を生んでしまうこともある。そういうことを恐れずに、つうか考えもせずに、「いいこと」をじゃかすかしていた時代だった、たしかに、あのころは。

実は浮気の相手の子で近親相姦じゃないかなんて、けちくさいちっぽけな薄汚いつっつきかたするよりも、そこは気高い友情と清潔な生き方で「いいこと」したんだって、あっさり認めて、次の段階を攻撃せんかい。あの父の時代の。私の時代の。あとさき考えない、はためいわくな、そういう乱雑な善行が、どんだけ子どもの世代を苦しめるかってことをさ。戦場はそこだぞ、お若いの。
私は、この映画、そういう意味で、なつかしいだけじゃなく、ほろ苦いだけじゃなく、相当ぐさっ、どきっ、ひやっとしながら見てたんだけどなー。まさか監督自身の父親への批判や抗議もこもってるんじゃねーよなー。

だけど、今の若い人って、ほんとに優しい。これまで見た限りじゃ、そんな風に父親のしたことを「おっさん、めーわくなんだよ、ちったあ考えてやれよ」みたいに言ってる人は誰もいなかった。
私がマゾなのかもしれんけど、こうも明確に私らの時代のまずいところをきっちり描いた映画を見て、誰もそこを言わないと、まったくジリジリしてきてしまう。ちょっとは反省したいんだけどな、おばさんの世代としては。

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カツジ猫