映画「ロビン・フッド」感想3
…みたいなノリなんですよ、ロビン・フッドの話って、ほんとに。
第一ロビンは矢の腕こそ神業級にすごいけど(前に射た矢が刺さってる上に、次の矢をあてて、最初の矢を二つに割いて突き刺すとか朝飯前)、けんかは決して強くない。いつも負けてた。でも陽気で、こだわらないで、敵でもあっさり仲好くなる。あのねー、藤崎竜の漫画「封神演義」の太公望的キャラっすよ。俳優だったら「魔法にかけられて」のおバカ(でもないけどな)王子やったマースデンでも行けるんじゃないかと、わたしゃひそかに思っていたのさ。
ジョン王は遠くのロンドンにいるから、まず登場しないで、いつもロビンと対立するのは、ノッティンガムの長官だけど、こいつがまたもうアホでねえ。ロビンにいいように、からかわれてた。
だいたいロビンたちの十八番は、絞首刑になりそうな仲間や罪のない(鹿を殺した程度の)人たちを、死刑場で救いだすことで、だから私の頭には、「死刑になりそうな人って皆いい人」って図式がインプットされたんだよな。伝説や児童文学は危険思想を植えつけるよ、まったく。
私の読んだ本に限らず、ロビンの伝説ってだいたいが、こんなもんのはずです。いいですか、五十人の男が放つ矢が五十ひきの犬にくわえられて一本もあたらないような世界ですぜお客さん。今回の映画で「激戦の中でロビンとマリアンがキスしてる」と文句をつけてた人がいたけど、もう、そういう世界なんだってば。言いかえれば、そういう場面見たら気づけよ、いいかげんにあきらめて、あー、そういう映画だなこれはって。あれは、あそこまでまだ、「これってまじめな歴史映画かもしれない」とあきらめつかないでいる人に、駄目押しでしっかり「こういう映画です、いいかげんにあきらめてください」と教える場面と思うぞ私は(笑)。
まだまだロビンの話は続くし、言いたいこともたくさんあるけど、さしあたり、あとひとつだけ。ロビンたちがひそむ森を、そのへんの鎮守の森と思っていてはいけない。私の読んだ本では「シャーウッドの森は海のように奥が深く、一度そこに逃げこんだ者をつかまえるのは不可能」と書いてあった。当時の(今でも?)あのへんの森はそんなで、そこで大集団が暮らしていても、まず狩りたてられたり包囲されたり見つけられたりすることはあり得ない。そういう感じで、あの森を考えてなくては印象が狂うと思います。