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最低の感覚。

◇昨日は、いやもう一昨日か、福岡教育大学の賃金カットの裁判の傍聴に行ってきた。前回の公判に引き続いて傍聴席は満席。若い人たちもかなりいたが、あれは西崎先生の教え子なのかな。わからないけど。

他の大学の監査などもやっている、つまりその道の専門家の会計士の人が原告側(教員側)の証人になっていて、「その年度が赤字になっても賃金をカットしなければ財政が破綻するということはない」「更に、学長裁量経費や物品費などを人件費に振り替えることは法律上問題はなく、そういった経営の努力をもっとできたはずだ」ということを証言しました。

また原告の一人の西崎先生が、「大学の教員は他の職種よりかなり遅れて職につき、給料をもらうようになるのも昇進も遅い。そのため、老後の資金などは一般の人より遅れて貯蓄することになる」「研究費は教育費も含むので、自分の研究については手出しの部分が多い」等の厳しい実状と、賃金カットに至る過程で、大学執行部が組合の団体交渉にまったく歩み寄る姿勢を見せなかった経緯を説明しました。

どちらの証言も大変わかりやすかったです。被告(大学側)の弁護士の人の反対尋問は逆に何を聞きたいのか、よくわかりませんでした。全大協という全国の大学の組合の集りについて、上下の関係を聞き、他の同様の訴訟を起こしている10ほどの大学や研究所と連絡を取り合っているのかと聞くのは、いかにも特定のグループが外部と連絡をとって扇動しているというイメージを持っておられるかのようでしたが、大学の教員はそんな強力な指導体制のもと命令一下で動くような素直な人間の集りじゃないですもんねー。

この間の大学内の事情については、いろんな人から断片的には私も聞いていたのですが、先生たちがあまりにも正攻法で、終始きちんと手続きを踏んでまともに交渉しているのに時々あきれて、「そんな無茶なことを学長や執行部の人たちが言うのだったら、いっぺん灰皿か何か投げつけてみた方がいいのじゃない?」と、かなり冗談でもなく言っていました。
私は学長も執行部の先生たちもよく存じ上げていますし、いっしょに仕事もしたことがあるので、身内のような感覚があるからだろうと思いますが、実際私だったら、本当に灰皿投げてただろうと思います(笑)。非常識には非常識をというのが私のルールなものですから。
しかし、裁判の場でのやりとりを見ていると、私のようなことをしていたら、きっとこういう場では裁判長や陪審員は説得できないんだろうなと痛感して、あくまでもきちんと対応してきた人たちのことを、あらためて尊敬しました。

◇その後で、報告会があって、弁護士の方から今後のスケジュールなどを説明してもらったのですが、その会場が天神のど真ん中の立派なビルの13階の会議室でした。帰りにエレベーターを待っていてふと見ると、エレベーター横の廊下の壁に、尖閣列島を渡すなとか何とかいう色刷りのポスターがはってあって、「日本会議」と名前がありました。そしてその上に、どういうか、「禁煙」とか「静粛に願います」みたいな感じの文字で小さい紙がはっきりとはってあって「中国人御断り」と書いてありました。

寒気がして吐き気がしました。こんなことが白昼堂々と街中で行われていることに、心から恐怖を感じました。下のポスターと無関係ではないでしょうが、今回の内閣改造で入閣した中に、この「日本会議」のメンバーは多いと聞きます。
先日、友人から「身辺に危険を感じたことはない?」とまじめに聞かれましたが、まったくこういうことがまかり通っているのなら、いつ非国民呼ばわりされて街中でリンチにあうかもしれませんね。

私は昭和天皇が亡くなったとき、国中が自粛ムードになったのがあまりにも恐ろしくて、ただもう自分がちゃんと呼吸できるようにするために、真っ赤なコートとショッキングピンクのスーツと金色の靴を買って、そのかっこうでずっと外出しつづけていました。何人かから「刺されますよ」と心配されたものですが、今回もやっぱり中国服を着て当分あのビルのあたりをうろつこうかしらと思っています。
ただ、あの中国服はグレーで上品で地味なのですねえ。こんなことなら、ドラゴンの刺繍の入ったのでもさがすべきだったと後悔しています(笑)。

◇それにしても、毎日新聞の四コマ漫画で子どもどうしが「バーカ」と悪口を言って「それヘイトスピーチだぞ」と言い返されて「やりにくい世の中になったなあ」とぼやきあうというのが、少し前にありましたが、あれを見た時も愕然とし、暗澹としました。
他国の人に、その国籍や人種ゆえに「死ね」とののしる、殺人にもひとしい行為を、こんな風にしかとらえられず、その禁止を窮屈な世の中になったと感じる感覚は私には理解不可能です。
「中国人御断り」の札にも、この漫画家はこの程度の痛みしか感じないのでしょうか。

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カツジ猫