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服従実験。

◇「アイヒマンの後継者」のDVD見終わりました。最後まで面白かった。そりゃ、これでもかってぐらい地味ですが、それがかえって、すごくおしゃれな感じもしました。

でも、ヤフーの感想はさんざんだね。いろんな理由があるんでしょうが。ふだんこういう地味なタイプの映画は見ない人が、何かまちがって見てしまったとか。ナチス関係の映画だったら悪役がはっきりしてて、お涙ちょうだいでもドンパチ活劇でも、安定して安心して見てられるから、それが好きな人にとって、これは不愉快で不安だったのだとか。
いずれにせよ、この不評は、逆に映画の良質さと、この問題の重要さを証明してる。この映画に反応できない、受け入れられない受けとめられない人たちがこんなに多いのなら、この映画の訴えも告発も、まったく正しかったんじゃないでしょうか。

私が九条の会の講演などでたまさかしゃべると、不評なんですよ。それは多分、予定調和をぶちこわすので、快くないんです。特に大衆や一般市民がアホで悪で残酷だって指摘は、リベラルな人たちには耐えがたいようで、それってすごく危険じゃないかと思うんですけどね。それも、これと同じことでしょう。

ハンナ・アーレントへの攻撃もそうだったけど、それが日本でも韓国でも軍部でも左翼でも日教組でも自民党でも、何かが悪だと図式化して、その枠内で感情をあっちにやったりこっちにやったりしてるのって、楽だし気分がいいんですよ。だから、それから外れたとたん、心が中有にさまよい始めるんだわきっと。

◇ところで、この映画の中で、服従実験の初期的なやつとして、「被験者5人を並べて座らせ、紙に書いた三本の棒を見せて、どれが四本目のもう一本と同じ長さか聞く。5人の内の4人はサクラで、その内に皆同じ、ちがった答えをわざと言い出す。すると4番目に座っていた本物の被験者は、つられて、同じようにまちがってしまう」というのが出て来ました。

なつかしいわ、大学院のときに心理学研究室の実験の協力を頼まれて、この被験者になったことがあります。
そのころの私って、今よりもっと他人を信じず多数派を信じなかったから、他の4人がまちがった答えを言い出しても、まるで気にせず、不安もなく、一人別の(つまり正しい)答えをしていました。
そもそも、最初に私がさっさと席につこうとしかけて、サクラの一人があわてて「そっちに行って」と私を4番目の席に追いたてたのも敗因だったと思うけど、まあそれがなくたって、結果は多分変わってない。

でももっとおかしかったのは、いっしょにその実験に参加した後輩のミステリ好きの男性は、もちろん私とは別の組での被験者でしたけど、終始一貫、他の人とはちがう答えをし続けて、つまり皆が正しかったときまで、一人ちがう答えを言ってしまっていたんだって。それも、筋金入りやなあ。

◇遊びにしちゃいけませんが、この「服従実験」、知り合いの誰彼や、ドラマや漫画や小説の主人公たちならどうするだろうと予想すると、何だかおかしい。
案外、私の友人知人は、私と気が合わない、嫌いなやつでも、最後までボタンは押さないだろうなと思える人が多いです。母も祖父母もまず絶対に押さない。悪くすると、こういう実験はやめさせろと言ってけんかしかねない。叔母はちょっと怪しいな。私の親友もどうだろう。カツジ猫は…わあ、押しそう(笑)。そして知らん顔して毛づくろいとかしてそう。故キャラメルは、強くて正しいからきっと押さない。三毛猫シナモンも賢くて優しいからきっと押さない。灰色猫のグレイスは、あーもうあいつは絶対押す。…って、いったい何をやってるんだ私は。

マキシマス(人間の方)は、押すわけがない。アトスは押さない。ポルトスとアラミスはわからない。ダルタニャンもわからんなあ。キャリー、サマンサ、シャーロットは押しそう。ミランダは多分押さないかも。スーザン押しそう、ブリーとガブリエルは案外押さないかも。リネットはうーん、わからん。押すかもね。パディントンは絶対押さない、もう何をかけてもいい(笑)。カマコナは押す、スティーブ押さない、ダニーも押さない、ジェリーもコノもグローバーもチンも、あれ「ファイブオー」はいかにも絶対押しそうにないキャラで固めてるなあ。八犬士は全員押しそうにないけど、道節と毛野は、命令されてじゃなく自分の好みで押しそうなのがなあ。
いかん、やってたら、きりがなくなる。

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カツジ猫