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沖ノ島の世界遺産推薦に思う。

宗像・沖ノ島が世界遺産に推薦されると聞いて、宗像市民の一人としてあらためて不安になっています。
この島は女人禁制です。私はそのことについて不快感を持ち、これが世界遺産に認定されることによって、女性や男性の生き方について望ましくない影響を与えることを危惧しています。
しかし、宗像市民の多数が望むならやむをえないと考えていましたので、このことについて十分な説明や話し合いが行われることを期待していました。

最低でも、学校教育の場で生徒たちにこのことをどう教えるか、また男女参画に関する活動の中で、このことをどう位置付けるのかは十分に話し合っておかなければ、将来さまざまな混乱を招くと思っていました。さらに市外の人権関係、女性問題関係のさまざまな機関や組織から問い合わせや批判があったときに、市民全体としてある程度は答えられるように討論を深めておかないと、市外と市内、また市民どうしの間にも分裂や対立や亀裂が起こりかねないということも恐れました。
そのために、アンケートへの回答や、市会議員への手紙、担当部局への電話などで、わずかながら私の心配は宗像市に伝えて来ました。

私の友人や知人の中には、ネットで署名活動をしたらいいという人もいました。新聞へ投書したらいいという人もいました。私が迷いながらもそうしなかったのは、外部へ訴える前に、まず市民の中で、この問題を話し合っていく方が先だと思っていたからです。
しかし、宗像市は、沖ノ島の世界遺産をアピールするのに、女人禁制ということを、まったくどこにも示しませんでした。これを明らかにすれば議論が起こるから、隠していたのだとしたら、それは決してよいやり方とは思えません。

ごく最近になって、本当に少しずつ女人禁制を書いたり言ったりしはじめましたが、それをどのように考えるのかについての明確な見解はありません。
非公式に聞いたところでは、「危険な場所なので女性を保護するためのものである」という理由をあげているようですが、これは江戸時代の文献の中でさえ、批判し否定されている理屈ですし、現代に通用するものとも思えません。
また、「男性もごく限られた人しか行けない」というのも現在の見解のようですが、最近でも特に資格を問うのでもなく、男性の取材を許可していますし、10年ほど前には男性だけの一般人のツアーの募集もして数十人が上陸しており、このことについての現時点での見解も示されていません。

私はここ数年来、市内のさまざまな場所で講演などを行うとき、折に触れて、沖ノ島を世界遺産にすることには反対である旨の発言をして来ましたが、それについての反論があったことはなく、むしろ強い賛意や共感を示されたことの方が多いです。
女人禁制以外にも沖ノ島の世界遺産化には、疑問や不安が市民の中には多くあります。宝物が守れるのか、漁業への影響はないのか、費用が膨大すぎないか、などの声をしばしば聞きます。「宗像は神の住む町」という市のキャッチコピーにも、宗教の自由の点から、強い嫌悪感を抱く人がいます。

観光地として利用するなら何よりも、こういう点について積極的に話し合い解決を図らねばならないのに、市は徹底してこのような点にふれるのをさけつづけています。それは、既成事実を積み重ねて、後戻りできない段階まで進ませて、説得しようとしているかのように見えます。

このようなやり方を見ていると、原発の誘致、国立競技場問題、安保関連法案の審議、などと、あまりにも共通する進め方に見えます。どうしようもなくなってから、反対できないようにしてから、認めてもらおうとしているのだとしたら、それはこの先ずっと、宗像市にとって大変不快な問題の数々を生み出す温床になるでしょう。ここはおおむね住みよい町ですが、この問題はこのまま進めば、賛成反対双方の市民にとって、不愉快で危険な火種を抱えることにもなりかねません。

すでに市議会では反対する立場から質問した議員もいますが、明確な回答は得られないままです。
そしてマスメディアは、このような状況をいっさい報道しないで、反対する人たちの声を紹介することもなく、女人禁制という事実さえもずっと伏せて、この問題を紹介して来ました。私の印象では「地元が歓迎」などという実態とは、現状はほど遠いもので、むしろ「触れてはならない、声に出して反対してはならない案件」という雰囲気さえ生まれています。それも原発や基地の問題と似ています。

私は宗像市の職員とは親しいし、いろいろお世話にもなって来ました。しかし、宗像市の将来を思えばこそ、このような事実は、賛否はともかく、少しでも多くの人に知っていただく方がいいと思うようになりました。

あえて申します。この記事を拡散して下さい。

(なお、詳しくはこのブログの書棚の「沖ノ島の世界遺産登録について」をお読み下さい。長いし、まとまっていませんが、何かの参考にはなるかと思います。)

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カツジ猫