淋しい話
テレビでは、何ちゃらキャンペーンで、安く旅に行けるとか食事に行けるとかいう話を嬉々としてあれこれ報道している。
安くなるったって、もともと数万円がなければその恩恵にはあずかれないわけで、そんなぜいたくができない人たちが、どんな思いで、この報道を見ているのかと思うと、切なくて情けなくてたまらなくなってくる。
指をくわえながら見ているしかない人たちが大勢いることを想定内で、行ける人向けにどんちゃか騒いでいるテレビの中の人たちが、ものすごく下品に見えてしかたがない。
だいたい、今どきテレビのワイドショーを見る人たちなんて、多分そんなに豊かで余裕のある人たちじゃないんじゃないだろうか。
旅行も観劇も豪華な食事も、する余裕なんかなくて、時間だけは少しはあって、一番お金のかからない楽しみとして、テレビを見ているような人が多いんじゃないかと何となく私は想像してしまう。ちがうかな。
要するに、テレビやワイドショーは、どう考えても、富裕層の見る娯楽ではない。
だから、そういう、つつましい人たちが、「ああ、世間の普通の人たちは、そういうぜいたくができるのだなあ」「自分は世の中に相手にしてもらえないし、政府も救う対象にしていないんだろうなあ」と、置いて行かれた気分をかみしめながら、テレビを見つつごはんを食べている様子を考えると、本当に淋しい話だなとしか思えない。
そういう人たちによりそって、向き合って、その人たちを少しでも楽しませなくてはならないだろうに、テレビやワイドショーは、いったいどういう人たちをターゲットにしているんだろうなあ。まあついでに言うなら政府も。
贅沢な旅行や食事に行って、景気回復をさせてくれるような人たちは、こんなご時勢では、多分もっとこっそりひっそり、他人を刺激したり羨望や嫉妬をかったりしないように、贅沢を楽しむよ。自分たちのようなことが出来ない人がかなりいるはずと思った時点で、大っぴらに、そういう贅沢をしてることを見せるのは慎む。
こんなこと書く私こそ、顰蹙や反感をかうだろうというのは覚悟で言うと、そういう恥ずかしさや危機感がないままに、そこそこのお金があって旅行や食事に行くことを平気でやってしまえる人たちというのは、多分富裕層じゃない。昔だったら、中間層ということになるんだろうが、今はもっと貧困層も増えているから、富裕層という自覚も配慮もない、残酷で無神経な人たちが増えていて、それを平気で肯定して安心させているのが、テレビでワイドショーで政府なのじゃないかと思えてならない。
私なら、今ぜいたくのできるお金があるとして、たくさんの人にはそれはないとして、そのぜいたくをするのに政府に援助してもらうなんて、とてもできない。どう誤解されてもいいけれど、それはとても卑しい行為のように思えてならない。自分は金持ちなのか貧乏なのか、国や社会はどう思っているのか、全然わからないから、不安でならない。