真夏じゃなかった晩夏の夜の夢。
◇涼しくなったら疲れが出て(笑)、連日ぼけっとしています。
「マン・オブ・スティール」の映画を見てきました。スーパーマンものですが、こういう昔のヒーロー物を現代版にすると、みょーに深刻になるのがイヤなんですが、これはそのへん、うまく作ってあって、気分よく見られました。
スーパーマンと悪者側が戦うところ、はんぱない町のこわし方で、「トランスフォーマー」のときも思ったのですけど、あの飛行機がビルにつっこんだ9・11の記憶って、米国じゃまるでトラウマになってないとしか思えなくて、すごいなあと変なことに感心しました。
で、その悪役側は地球を改造して自分の住みやすい星にしようと、空気の組成から何から変えようとしてくるんですけど、何だか見てて、先進国が開発途上国を自国の文明の基準で造り変えちゃうのを連想してしまいました。
もう、福島原発の汚染水問題では、あまりのひどさに、無気力になってしまいそうなんですが(現場でがんばっている作業員の皆さんのこと思ったら、無気力になんかなっちゃいかんと思うのだけど)、こんな映画見ると、その、なかば思考停止した頭で、ひょっとしたら、これはどこか遠くの、めっちゃすぐれた文明を持つ星の生物が、自分たちは放射能に強い(というより放射能が身体にいい)種族なもんで、地球を自分たち向きに改造しようとしてる、壮大な計画の一環かと、つい疑いたくなります。
今の政府にも電力会社にも、きっと彼らの手先が入りこんでるのにちがいない。あったね、そう言や、その昔(リメイクもされてるみたいだけど)トカゲ型エイリアンが人間の皮着て地球に潜入侵略してくる「V」なんていう海外ドラマが。
◇「レ・ミゼラブル」のDVDも、ついまた見てしまったんですが、あらためて後半の学生たち、特にアンジョルラスとマリウスやってる俳優たち、あたりまえながら、声がよくって、歌がうまいよなー。前半のジャックマン、ラッセル、ハサウェイたちの演技力で聞かせる歌の数々も絶対悪くはないんだけど、アンジョルラスやマリウスの歌声って、どういうか、吐く息がそのまんま歌声になってるもんなー。
エポニーヌ(もう、役名も役者名もごちゃごちゃだわ)も、もちろんうまいけど、しみじみした歌が多いから、じわっとしみいる感じなのにひきかえ、学生二人は議論や演説で派手に歌い上げるから、声のよさが、そのまま、まっすぐ前面に出る。まだマリウスは個人的に恋してるから、やわらかいとこもあるが、何しろ「私」なしで、「公」しかないアンジョルラスが、信念と思想だけで純粋に訴えて来る迫力の声の強さは、すごい。
アメリカが9・11の記憶を忘れたかどうかは知らんが、アンジョルラスたちの人気のほどを見ると、70年代の赤軍派やら何やらの記憶も消えてきたと思わざるを得ない。あれだけ赤旗、堂々とふりまわす映画が普通に日本やアメリカで上映されて人気を博しているのなんて、「赤狩り」のマッカーシーが見たら憤死するぞきっと。
私も大学時代、学生運動も自治会活動もしてたし、デモにもよく行ったけど、赤旗は掲げた記憶がない。それはもう、ほんとにバリバリの共産党や労働組合の人がかかげるもので、あ、でもあの頃、共産党や組合も、そんなに赤旗は持たなかったなあ。むしろ過激派と言われたような人たちがよく使ってたんじゃなかったっけ。私たちはブルーの全学連の旗を掲げてデモしていた。
そんな、よかれあしかれ、特別でちょっと敬遠もされてた赤旗が、映画の中であんなにカッコよく使われてたのも驚きだったが、公演を見に行ったとき、劇場のDVDやら何かのグッズを売ってるコーナーで、平気で小さい赤旗がディスプレイみたいに飾ってあったのには、思わずぎょっとし、うっと息がつまり、次の瞬間、そんな自分も何もかも、いろいろおかしくて、吹き出しそうになって困った。
もはや赤旗には、陰惨なイメージも危険なイメージもなくて、アンジョルラスやマリウスのさわやかな美貌とつながっちゃうんだろうなー。それは、むしろ革命や弱者救済の持つ(べき)本来のイメージなのかもしれないから、とてもいいことではあるんだけど、でも、ちょっとくすぐったい。
そして、ミュージカルだか音楽だか芸術だかの、力のすごさも、思い知らされる。あ、もちろん、全面的に、いい意味で。