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私が気に入るはずですわ。

◇「太陽の下の10万ドル」のDVDが届いたので見ているのだが、やっぱりこれ、面白い。ネットでの評判がさんざんだったのが不思議でならない。まっ白い砂漠を決してスマートではないが、がんがん走り続けるトラックたち、アフリカの住民とフランス人たちの関係。そして革命もちゃんと舞台装置として書きこまれている。

ベルモンド(ロッコ)の乗るスマートな新車のトラックのカッコよさと危うさ。バンチュラ(マレック)の乗るトラックの古ぼけたたのもしさ。ぶつけられて満身創痍となりながら、へしゃげた前面をさらして、よたよたとかたむいて街路に現れる場面など、トラックの風貌がバンチュラの面魂そのものに見える。

それと、私が何であんなにはまって何度も映画館に通ったか、今回見ててよくわかった。あの、ここにいらして、のぞいてる方の中に、いわゆる腐女子の方々は多分そういないかもしれないけど、いたらもうぜひ拡散して下さい!と言いたくなるほど貴重な情報(笑)。今はすっかり忘れられ、ネットの評価も「よくわからない」「つまらない」とさんざんなこの映画の本当の価値は、隠されたポイントは、これ、まれに見るほどよくできた腐女子好みの大人のボーイズラブ映画ですよ。「マスター・アンド・コマンダー」あたりを見て夢中になれる腐女子なら、この映画のそういうポイントは絶対にわかるはず。

ベルモンドが連れて逃げる黒髪のきゃしゃな女性は、案外活躍しているし、いい使われ方もしてます。でも、彼女は言ってみりゃダミーで、この映画のヒロインは、「禁じられた恋の島」で、美しいカリスマ的魅力をたたえた父親を演じたレジナルド(シュタイナー)です。もう、もろに。

彼は背も飛びぬけて高いし、ごつい荒くれ男風だし、いわゆる典型的なハンサムではないからちょっと見わかりにくいですけど(だから、わからない人には絶対見当もつかない、予想もできない、そういうところも実にうまいの)、扱いはもう完全に女性の位置なんですよ。金髪で顔だちもととのってて、姿もきれい。バンチュラとベルモンドの、ひとくせありげな、こっちはどっちも絶対にハンサムじゃない二人のそばで、いつも女性の立ち位置にいる。謎めいた過去を持ち、傷ついてこわれた精神を抱え、途中でけがしてお荷物になる。もう絵に描いたようなヒロイン。

だいたい、ごていねいに、冒頭に近くロッコのいたずらで、追っかけてくる二人(バンチュラとレジナルド)は、恋人どうしだというデマを飛ばされる。それで、現地人のドライブインでなじみの客や店主から、わけがわからないまま、さんざんからかわれた二人は、真相に気づいて激怒して、店を完全破壊する。これだけはっきり観客に映画が多分笑いながらメッセージかサインか出してるのに、皆気づかないかなあ。この映画の最大の魅力はそれですよ。乾いた白い砂漠と、巨大で武骨なトラックと、深刻なようでどこかふざけた、男たちの痴話げんか。

あちこちで何気なく飛ばされる冗談も、さりげなく普通にバンチュラのそばに立ってるレジナルドのたたずまいも、もうすべて、くらくらしそうになるほどに、レジナルドの「女性」を表現してます。これがわからないなんて、ほんと信じられない。
そういう危ない絆は、もちろんベルモンドとバンチュラの間にもあって、対立してるけど基本この二人も恋仲なんですよ。だからラストがあれでいいんです。よすぎます。(最後の殴り合いなんて完璧に相思相愛のじゃれあいじゃないか。)

男性や俳優の好みというのもあるでしょうから、いちがいには言えませんけど、痩せても枯れても仮にも腐女子というのなら、この名作は多分気に入るはず。一度は絶対見てほしい。とは言え、DVDはレンタルショップにはないだろうし、とっくに絶版ですけどね。でも中古は2000円ぐらいで安く買えましたよ。ほんとに、だまされたと思って一度見て下さいな。

あれっ、テレビで放映があるんじゃない!? 何というタイミングのよさ。これはもう、ぜひ!

https://www.thecinema.jp/detail/index.php?cinema_id=01571

◇アベは、ミサイルのおどかしがばれて効果が薄らがない内に解散総選挙に打って出るつもりになったようですね。これが最後の機会だと思っているのでしょう。10月は私も息もできないほど忙しいのですが、できるだけのことはやろうと思っています。

そして、今回の選挙では民進党と公明党と、その支持者の皆さんに本当にがんばってほしい。アベと、それが体現するものを許していいのか、と、そのことを今度こそしっかりと考えてほしい。これが最後のチャンスです、という言い方はしたくない。むしろ、最初のチャンスにしてほしいです。

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カツジ猫