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腰が抜けた。

◇佐賀県のどこかの町(か、そこの住民団体か)が、核燃料の再処理施設を誘致したいと要望書を出したとかで、あいた口がふさがらない。対岸の玄海原発みたいな補助金をこれまでもらえなかったのが不満らしいということもあるようで、ますますただもう呆然とする。いったいニュースを見たり本を読んだりしていないのか。飛んで火にいる夏の虫とはこのことだろう。オスプレイといい原発といい、佐賀という場所は運が悪いのかマゾヒストなのか、いったいどうなっているんだろう。
せめて、こういう要望を出す前に、少しでも専門家を招いて勉強するとか、世界のエネルギー政策とかもいろいろ調べてみるとか、一度福島や六ケ所村を視察するとか、最低のことはしておくべきではないだろうか。ひょっとしてしたのかな。新聞で読む限り、そういうこともなかったようだが。

昔、アメリカの水爆がスペイン沖に誤って落っこちた事件(爆発はしなかった)をブラックコメディタッチで描いた「魚が出てきた日」という映画があった。福岡のセンターシネマで見たから、もう50年ぐらい前かな。友人がものすごく好きで、はまって何度も見てた。トム・コートネイが出てたっけ。キャンディス・バーゲンも出てたんじゃないかな。

(え、検索したらこれ、カコヤニス監督だったんか!? 名匠じゃん。それがあんなアホな映画を…。でもヤフーの評価でも、めちゃくちゃ点が高いし、たしかに今見ると、さらに恐いし。あ、DVDも出てるんだ! 画質が悪いと怒ってる人多いけど、私の記憶じゃ、もともと映画館で観たときも、あまり画質はよくなかったような気がする、この映画。)

以下はネタばれ。その映画の中で、素朴な山羊飼いの男が、厳重に金属で密閉した水爆を、海から引き揚げて、何だか貴重なものと思い、必死でいろいろ工夫して切ったり壊したりして開けようとする。もちろん簡単に開くわけがない。彼は苦労し、絶望し、でもあきらめないで必死に努力して、ついに観光客の芸術家(多分それがキャンディスだったよね)の持ってた、金属を切るトーチを盗んで金属を切り、放射能で島も海も汚染させる。最後、カーニバルでにぎわう海岸の夜の海に、数知れない魚が白い腹を見せてぷかぷか浮かんで来るのがラストシーンだ。

友人は映画にはまりつつも、その山羊飼いに見るたび毎回猛烈に怒っていた。「あの愚かさが、もう見ていてたまらんのよね」と歯をぎりぎり言わせんばかりに、くやしがっていた。
私はもっと冷静で、「ばかってのはしょうがない。こういう人間に結局世界は支配されるのだ。こういう人間を放置していた世界の責任でもある」みたいな冷やかさで、その映画の登場人物全部をせせら笑っていた気がする。まあ友人の方が私より、人間と世界を多分愛していたのだろう。二人ともまだ二十代前半だった。
記憶のかなたに埋もれていた、その友人の熱い怒りを、今あらためて思い出している。

◇今日、非常勤先の大学で後期の授業が始まった。思ったよりも受講生が多かったので、来週は教室を変えてもらったほうがいいかもしれない。久しぶりの授業なので、はりきってしゃべっていたら、疲れた(笑)。授業のあとで初々しい女子学生が来て、「父がぜひ先生にお会いするよう申しました」と言うので聞いてみたら、昔の教え子の娘さんだった。そう聞かされても私はそのお父さんの姿というと、その女子学生と同じくらいの年代の、ひょろっとした若い学生しか思い浮かばない。勉強も人柄もすぐれた学生だった。今は教頭先生をしているそうだ。何だかもう、夢を見ているような気分がした。彼女の一番下の弟は、私の名前の一文字をもらってくれているらしい。他にも何人かそういう人がいるので、私は悪い犯罪とかは犯せないのである。今日はその後、予定があったので、ゆっくり話せないでちょっと残念だった。

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カツジ猫