読んじゃった。
◇冷蔵庫の中で死にかけていた、もろもろのおかずや刺身を何とか無事に調理して食べ、「早く使って下さいね」と言われながら大学の事務の人からいただいた、おうちでできたゴーヤ(考えて見れば昔これは「にがうり」と呼ばれていて、私と母は二人でひそかに「いぼちんぽ」と呼んで死ぬほど笑っていたっけよ)も何とか牛肉と炒めてタッパーにつめ、いろいろ安心したせいか、ベッドで上の家から持ってきた「ハワーズ・エンド」を読み出したら、やめられなくなり、カツジ猫にまつわられながら、結局徹夜して読んでしまった。ふわあ、面白かった。フォースターって「モーリス」書いて死ぬまで発表しなかった人だよね。女性問題についても、こんなに楽しく厳しい話を、あの昔にきっちり書いていたのか。それが英国でずっと愛読され人気を保ってるすごさ。そして、格差とか身分制度へのヒロイン二人のイラつくほどのこだわりも(まあそれが作品のテーマでもあるけど)、しっかり描きこまれている。
私は学生のころ一応読んではいたのだが、もう何一つ覚えていなくて、ルースが暗い家の中に消えて行くのをマーガレットが見送る場面の、ルースの背中やスカートが次第に遠ざかる描写だけ、ただそれだけしか記憶になかった。読み直して、こんなに楽しめて、生きててよかったとつくづく思う。
◇ところで昨日の憲法学習会は、70名ほどの参加で盛会だった。「このままでは人が来ない」とあせった、市民連合のメンバーの一人が、大変顔の広い人で、知人に電話をかけまくったらしい。本当にその人の頼みだからということでおいでになったのではないかと思うような高齢の方も何人かおられて、ありがたいやら恐縮するやら。若い人もそこそこ来てくれていた。
講師の後藤氏はとても若くて、会場づくりで椅子を並べるのまで手伝って下さった。それで気を許したのか、市民連合の恐れを知らぬおじさんたちが「よめさんはおらっしゃれるとですか」などと、セクハラ発言をして、かまっていた。
講演の内容は、専門分野の日本の戦前の歴史を細かく述べて、満州事変や日中戦争に日本が踏みこんで行った過程を検証する、すごくまじめな手堅いもので、しかもわかりやすくて安心して聞けた。高校で近代史なんてほとんど習わなかったから一気に闇が光を当てられ、目からウロコが落ちた感じだった。
戦争法や集団的自衛権で、一番変わったのは、自衛隊の現場での武器使用などの判断が自由に行われるようになって来ていることで、制服組が背広組の束縛をなくしつつあるという指摘が、戦前の戦争への道が、国家間の交渉決裂より、現場の小競り合いや暴走から端を発して大戦争になって行くという事実と重ねられて、その危険性が鮮やかに見えて来た。
そして、稲田防衛相の日報非公開が報告を受けていたかどうか、どっちであっても、稲田氏の能力や適任かどうかとはまた別に、陸自が情報をリークして現職の大臣をやめさせた事実はすごく重要という指摘も、はっとさせられた。
稲田が大嫌いだったから、あの時点ではむしろ陸自に同情共感していたが、そういうこととは別に、軍部が政府を好きにできる事実が生まれたということでもあったのだなと気づいた。
アベやイナダがバカなのは、こうやって現場の軍人がたまりかねてしゃしゃり出てくるのを許すという点でも、二重に罪が重いのだなと、あらためて悟る。
◇それはいいが、その後の質疑応答では、いつものことだが、宗像ではフロアに自分が講演できるようなものすごい体験や知識の人がひしめいていて、質問というよりスピーチになるので、そこは司会者も気をつけて、短く簡単に切り上げてもらおうとするのだが、そうしたら今度は「後藤先生は、今この時に、安倍の暴走をとめるために私たち市民連合に何を求められますか」などという発言が飛び出し、もう、アベのやり方に皆が怒っているのはわかっていたが、そんなに煮詰まっているのかと、私の方が驚いた。
後藤氏は本当に研究者らしく良心的で、そういう質問に専門的な知識でわかることは、ていねいにきちんと答える一方、今後の予測や、とるべき行動などについては、決してわからないことをわかってるとは言わないで、そこもすごく信頼出来て好感が持てた。司会者も「この講演を企画した段階では、まさか解散がこんなに急になるとは思っていなかったので」とフォローにこれつとめていたが、本当に宗像市のこういった集会では、このごろいつも、フロアの熱気がすごすぎて、言い方は悪いが、ガス抜きでも受け皿でも何でもいいが、この怒りやもどかしさを受けとめる野党共闘の候補が、絶対にいなくてはならない。うかうかしてたら、こっちがじゃまだと、弾き飛ばされそうな気さえする。
◇徹夜明けだが、今日明日で、二つの家を片づけまくるという大事業があるのだよなあ。とりあえず、ひと眠りした方がいいのかしらん。もう自分の体調がいいか悪いかさえ、このごろはよくわからない。