足が地につかない。
◇共謀罪のことを考えていると、凶暴な気分になって、無茶を承知で上の家の仏間と書庫の家具を入れ替えて部屋を大改造した。まだ荷物も片づいていない中の暴挙なので、絶対何かひとつか二つこわれるだろうと覚悟していたが、家具や置物も私のただならぬ気配を察知したのか、皆おとなしく移動させられてくれて、まだ散らかっているのは同じだが、もしかしたら前よりも居心地がいいかもしれない部屋ができた。それでも私の腹の虫はおさまらず、庭のクマザサを掘り起こす大事業にかかろうかと思ったが、明日の講演のためには、あまり老いの身を酷使してはまずいだろうと思いとどまった。
何か数日前から、回りの風景が変わった気がする。「1984年」や「影の軍隊」や多喜二の小説や、その他映画や小説でしか知らなった暗黒の時代、物語の世界に自分が踏みこみはじめているようで、足が地につかない。
私が一番恐いのは、宗像市長も教育大の学長も似たところがあるが、安倍晋三も菅も自分たちのしていることの結果がまったくわかっていないのではないかということだ。彼らが作ったシステムは、いずれ人間の最低の部分を引き出し、闇と悪によって使い倒される。そういう未来は彼らにさえも、まったく見えていないのだろう。
◇ぼやっと見ているDVDがいいと思って、「名探偵ポワロ」を借りてきた。犯人が犯行に及んで、ポワロが「やっぱり予想した通りになった」と言うので、友人が「わかってて何で何もしなかったんです」と責めるとポワロが、「まだ何もしていないものを、どうしようというのですか、どうしようもありません」とか言う。そうだよな、普通。と、ますます憂鬱になる。
◇「騎士団長殺し」を読んでしまった。あれ以外のどんな結末だったらいいのかというと、それは思いつかないが、妙に拍子抜けでものたりなかった。遊園地で遊んで帰ってきたみたいな気分になった。