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雨が降ったせいなのでしょうか

家の裏の川は増水して薄茶色の水が激しく流れています。
夜はテレビを消すと水音が家の中まで微かに届いて来ます。
先日窓から見るともなく川面を眺めて居たら、どうやら鯉らしい巨大な魚が夕暮れの光の中で躍り上がって再び水に消えました。二回程それが繰り返され、後はまた静まりかえりました。
この増水では、あの鯉も流れに乗ってどこか下流に行ったのか、それとも石垣の下にでも潜んで激流をやり過ごして居るのでしょうか。

暑くなる前に物置や離れの荷物を片付けて仕舞いたいのですが、母を放って置く訳にも行かず、時間の確保に苦慮して居ます。
夜は母は普通でしたら八時には寝るのですが、私が居間に居て一緒にテレビを観て居ると余程楽しいのか、どうかすると十一時近くまで起きて居ます。
私も嫌では無いのですが、母が寝た後自分の部屋で書く原稿を抱えて居ると、遅くまで母と付き合うとその分夜更かしをしなければならず、どうかすると徹夜になります。
母はそんな事は知りませんから、朝私が遅くまで寝て居ると心配して起こしに来ます。結局三時間も寝られれば良い方で、その後車で遠出する時は、居眠りしそうで恐くてならない。
出かける前に数時間でも仮眠を取ろうと思っても母が「帰りが遅くなるから、早く出発した方が良い」と勧めるので、出発した後、路傍で車を停めて寝て居ます。

母は少しでも私に家に居て欲しいので、仕事で出たり買い物に行くのを嫌がります。そして家に居たら居たで、自分の側に居て欲しい様です。
気持ちは良く分かりますが、それでは仕事が出来ないし、収入も無くなって仕舞う。

分かって居ても私がしてしまう大きな間違いは、母を楽しく気持ち良くさせて置けば、暫くはそれで我慢してくれるのではないかと言う事です。
誰でもそうでしょうが、そういう思いで尽くすと完全な逆効果で、その楽しさがずっと続く事を相手は求めて来るのです。逆にしがみつかれて、手放して貰えなくなる。

此の頃はもう身体が保たず、母の前で寝て仕舞います。母がテレビのチャンネルを変える気力が無いのか、やり方を忘れたのか、分かる訳も無い複雑なドラマを黙って観て居るのを感じながら、母でも分かる番組にチャンネルを変えてやる力も無く、詰まらない物を観て居ればその内寝るだろうと思って居る自分が遣り切れません。実際母は間もなく「もう寝よう」と言って寝室に引き上げます。やっと自分の仕事が出来るという安心と罪の意識が押し寄せて来ます。

キャラママさんが良く職場で自分の研究をするのに、いつも罪悪感を持たなくてはならないのはどういう事だと怒って居られましたが、私も母と自分の生活を支える為の仕事をするのに、どうしてこんなに悪い事をして居る様な気分をずっと抱えなければならないのか、次第に堪らなくなって来ます。

せめて母が生きている間は、この古い田舎の家を維持して行きたいと思って居ましたが、そろそろ限界かも知れませんね。
この家も母も私に与えてくれる物は大きいのですが、それを守る為に払う犠牲も又大きく、少しバランスを考えて見る必要があるのかも知れません。

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カツジ猫