顔が見えて来る
「ノーマンズ・ランド」の映画を見た後で、キャラママさんが面白いと言って居た米澤穂信の小説「さよなら妖精」を読みました。どちらもユーゴスラビアの紛争が題材と成って居ます。
昨日本棚の整理をして居ましたら、何時買って居たのか講談社現代新書の「ユーゴ紛争」と言う本が有り、つい半分以上読んでしまいました。
アフリカの紛争等は知識不足も有って何と無く「まだ開発途上国だからそういう事も有るのか」と思って仕舞いがちですが、東欧と言えば小説でも歴史でも馴染みが深い事も有り、それなりに理解出来る文化圏の様に感じて居た物です。
それがユーゴ紛争では虐殺やレイプが頻発し、しかも敵の女性を妊娠させて民族としての消滅を図るという、古代でも中世でも余り聞かない、だから前近代的とさえ言って良いのかどうか分からない様な乱暴な方針が取られて居ると聞いて、信じられない思いがして居ました。
この新書も良くまとめてあって分かりやすいのですが、映画や小説を読んで居なかったら、所詮知識としてしか頭に流れ込まないもどかしさが有った事でしょう。だから買っても読まない侭に成って居たのかも知れません。
「さよなら妖精」が親しい友人の運命と国家の運命が重なる事で、鮮烈に世界情勢を意識する話になって居るのと同様、私も知人や親族の近況に関する情報を求める様に、「ユーゴ紛争」の記述に読み耽りました。
それにしても、幾つもの文化や民族が長い年月共存して居て、結婚も普通にして双方の血をひく子どもたちも多い状況でなお、これだけの対立と紛争が起こるとは全くどうした事なのか。
支配者も国民も何を選択し、どの様に行動するかがその後の運命を左右する事になる恐さが、ひしひしと伝わって来ます。
今の日本の政府が手落ちばかりして居るのは確かですが、自民党政治の時代も含めて、こんな状況でも一応国が運営出来て居るのが抜群の幸運、奇跡としか言い様が有りませんね。
もう少し勉強して、この内乱の原因は一体何なのか少しでも掴めたら良いがと思って居ます。
所でそんな興味の為の新しい本を買うのも控え、御菓子も御茶も洋服も買うのを我慢して居る毎日なのに、買い物の為に母に渡して居る僅かな金がもう無くなったと言って来ました。小説を書いて居る若い人が仲間で本を出版するからと言う事で、母も4000円カンパしたのだとか。目の前が暗く成りました。私の半月分の食費です。
母も田舎で芸術活動をして居る若い人を支援したいと思うのでしょうし、私もそれは支えたいと思いますけれど、母もその若い人も我が家の経済状態をどれだけ理解して居るのかと本当に溜め息が出る思いです。10万もあるかないかの僅かな年金収入しか無い老人二人が1000円の出費にも怯えて暮らして居る現状をどれだけ知って居られるのでしょう。
芸術活動にも市民運動にも参加したいし支援もしたいと思って居ますけれど、それにどれだけの犠牲を払い痛みを感じて居るかはせめて分かっていて欲しい。