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馬琴のペンネーム

少し前に来ていた「近世文芸」に、リンクしている「北窓書屋」の管理人さんの論文が載っているので、読みました。
馬琴の黄表紙は、私に言わせれば(そして誰に言わせても)、ろくな出来じゃないのですが、菱岡君は昔から私がそう言うたびに、「そうですか?」と首をかしげていて、私はこの人のユーモア感覚はどうなっているんだとひそかに思っていたのですが、今回の論文を読むと、馬琴が適当に使っていたように言われていた、二つのペンネームが、それぞれ馬琴の家族やその他への、きちんとした意識や配慮、方向性を秘めていることもわかるし、それに馬琴が、滑稽だけでなく、将来の合巻につながる歴史物や演劇風のような内容の黄表紙をそれなりに大事にしていたこともうかがわれます。

考えてみれば、黄表紙の前身の黒本というのはその前の子ども向きの赤本から変化してきた、青少年向きの演劇や軍記物のダイジェストが主な内容なんですよね。では、風刺や滑稽とは別に、むしろその伝統を引いた歴史や演劇風が黄表紙の一部でも正統でもおかしくないし、それが合巻で連続して復活したとも考えていいんですよね。文学史もそうなると、書き替えていいのではないでしょうか。
緻密で手堅い考証から、ペンネームという一見ささいな問題が、こうして大きな流れの見直しまでつながる。いや~、面白かったです。

他にももらっている抜きずりとか面白いのがあるし、私の本への身に余るご感想をいただいたお手紙の中にも、すごく紹介したいことがあるんですが、今夜はもう時間がない。
しかし、こうやって、ゆっくり若い人の論文を読む時間があるというのは、何ともう幸せなことかと思います。

猫のカツジはどうも退屈なので、シナモンとおともだちになって遊びたいようですね。しかし、シナモンからは、フウと怒られてしょげていますが。あれはどうも、シナモンが気になってしかたがないように見えます。
シナモンも基本的には優しい猫なので、いつかうけいれてくれるといいのですが。

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カツジ猫