映画「大奥」感想集映画「大奥」感想-2
どうせまた、だらだら長いんだろうと思っておられる方も多いでしょうが、だらだら長いです(笑)。
全体の印象をまず書いておくと、重厚なのに(いい意味で)軽く、豪華だけど淡白な、ふしぎな味わいの映画ですね。ものたりないと思う人もいるでしょうけど、これだけキワモノの世界をさほど抵抗もなくするっとたくさんの人が受け入れられるのには、この軽さと淡白さが必要だろうなと思ったし、それは成功している。
俳優も皆それぞれ、落ちついて自然に演じていて、感心したし好感が持てました。
将軍吉宗役の柴咲コウは「バトル・ロワイヤル」で、水野の二宮は「硫黄島からの手紙」でしか見てないんですが、なかなかいいんじゃないでしょうか。「悪びれず演じているのが最高」の一言につきます。こんな世界を描くのに、監督も役者もちらっとでも照れたり苦笑したりしたら、ものすごく薄汚く安っぽく、見られたもんではなくなってしまう。とんでもない奇妙な話だからこそ、堂々と、大まじめに、きっちりと、しかも変に肩に力を入れたりしないで、自然に演じなくてはいけない。主役の二人がそれをちゃんとやってくれていたのが、一番の救いでした。
しかしあれだよな、考えてみると、そう難しいことでもないかもしれない。吉宗と水野の関係では男女逆転してるとはいえ、普通の男女の恋愛だし、このくらいの女性上位は古今東西いくらでもある。そんなに苦労しないかもしれない。
杉下も性を売るという要素はあるにしても、そんなに異様な心理があるわけでもなく、普通の若者として演じられますからね。
その点では、同性愛もしくはそれに近い感情を演じなくてはならない、鶴岡、松島、垣添といった人たちの方が演技は難しいのかもしれない。
私は鶴岡役の彼が、一番苦労してるように見えた。がんばってるけど、多分ほんとに男性を愛するという気持ちはわかってなかったんだろうなと思った。まあ、大奥の暗いどろどろの面を示すのだから、あれでいいのかもしれないが、やっぱりもう少しはいちずで清々しい切なさがなくては、まずいのではないだろうか。
その点、垣添はかわいいアホな子として開き直ってたのが成功してたし、松島役の玉木宏はなんかもう、お見事というしかなかった。水野の二宮がひたすら好青年で健康な美しさだから、これぞ大奥という妖しい美しさが他のどこかにないとまずいが、その役割を十二分に果たしていて、彼が一人いるだけで、あの映画が描く世界の大奥に存在感や実感が生まれてたと思う。
佐々木蔵之介の藤波も悪くはなかったが、やはり男と愛し合う気持ちをきちんと自分のものにしてないようだった。
二宮の水野は美しくないとかいろいろ言われているが、健康で男らしい面となにごともしなやかに受け入れていく女性的な面をかねそなえるとしたら、あの雰囲気が一番見る者を刺激しないで無難な気がする。
だけどこの映画、ボーイズラブの映画かなあ。そこに目くじらたててる人も反感抱いてる人もいるだろうけど、この映画の最大のポイントはタイトルにもくっついている「男女逆転」ということで、それをこれだけ堂々とやってのけてるのが、むしろ大変なことだと思う。
そういうことをはじめとして、見ていてつくづく、「あー、いい時代になったもんだ」って思いつづけてた。というところで、続きはまた明日。