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「ナイブズアウト」は、とにかくもう力強い

映画「ナイブズアウト」を見て来ました。私のものすごく好みというわけじゃないですけど、よくできていて、何よりも力強くて、まっとうで、健全でした。あんなに娯楽大作なのに、すごいです。麻生太郎に見せてやりたかった(笑)。

ミステリだからネタバレができなくて何も書けないんですが、舞台は郊外の豪邸で、この豪邸がどことなく品がなくて、贅沢だけど安っぽいのよ。それが実はそうでなくてはならなかった正しい描写っつうか演出っつうかだったのが、後でわかってうなりました。
これは別にネタバレじゃないと思うけど、この豪邸のブルジョアのエリート一族は、実は成り上がり者の一家なんですよね。それはもう最初からの人物紹介で真正面からきっちり説明されるのにね、うっかり忘れてしまって、昔ながらの貴族みたいに思ってしまう。おそらくは、もちろん、当人たちも。

でも、そうじゃない。貴族やエリートがいいとは言わないけど、こいつら一族はそんなんじゃない。自分たちも庶民で俗物で下品なんですよ。それが何度もしつこく明確に語られるのに、なぜなんでしょう、うっかり気づかなくて、この一族が名門に思えてしまう。
なのに、こいつらは何代も続いた由緒ある家柄みたいな気分になって、そういう発想でこてこてに固まってる。あんまりそこに迷いがないから、見てるこっちもついそう思ってしまう。

すごいよね。何だかほら、日本民族とか自分たちとかは勝ち組で優秀で家柄がよくて、外国人とか貧困層とは生まれながらにちがうんだとか、勝手に思いこんでエリート気分になってる、とことん勘違いで安っぽい人たちの姿を、この一族で見せられた気がしたよ。

しかし、彼らがどう言おうとどうふるまおうと、そこがあなた、あの家ですよ。すごいインテリアというか構造というか、よくあんな家作ったよなあ。すみずみまで、一分のすきなく、あの一族をみごとに象徴する統一感のなさ、品のなさ、深みのなさ、いごこちの悪さ、にわかじたての、こけおどし。すばらしい

あの一族の本質を、どうやってかは知らないけど、うっかり観客に忘れさせて、それをあの家のつくりで暴露する。これがミステリのトリックでなくて何だろう。

ちなみに私、「パラサイト」の富裕層のお屋敷が、セットだったらしいんだけど、贅沢だけど個性がなくて薄っぺらいのが、計算してそうなのか、予算がなくてこうなったのか、どっちだろうと思って見てました。住まいということでなら、貧困な家族が住んでた地下の家の方が、よっぽど素敵でカッコよくて面白くって好きでしたよ。たまたまその直後に「ダウントン・アビー」を見て、これはまた英国の実際のお城というか邸宅がそのまま舞台になってるから、建物が半分主役なわけで、実にもう人格を持ったような見事さで。

そういうことを考えていて、あらためて思うのは、「ナイブズアウト」の、あの悪趣味な屋敷を作り上げたみごとさです。すみからすみまで、すごいじゃん。アカデミー賞候補らしいけど、他の部門を逃しても、美術賞か何かは絶対に与えるべきだ。

うう、これを書く前に、「誰がために憲法はある」の映画感想を書こうと思っていたのに、こっちが先になっちゃったか。

あ、昨日の「閑話休題」に書いたことで、「お買い物と文学」の「二遊間で買い物」も、ちょっとさっき補充しました。よろしかったら、ごらん下さい。それと映像を確認したら、高橋・周東両選手は「服を買いに行く」とははっきりは言ってないのね。すみません。でもまあそうとしかとれない感じではあるし、実際にそうなのだから、まあいいことにしておこう。

 

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カツジ猫