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三毛猫シナモンの命日。

◇ばたばたと、あわただしい毎日を過ごしていて、はったと気がついたら、一年前に死んだ三毛猫シナモンの命日を危うく忘れるところだった。
ちょうど数日前に、家に飾る花がほしいと思って買いに行ったとき、何にするか決まらないでいたら、お店の人から白いトルコキキョウを勧められて、他にも何だか白い花といっしょに買って帰ったばかりだった。さしあたり、それを飾ってやって、また花屋に行ったら、お店を閉めて帰るぎりぎりの店長と遭遇し、気持ちよく引っ返してくれて、白いユリと淡いピンクがかったオレンジのカーネーションを見つくろってくれた。

その後で、缶詰でも供えてやろうかとナフコに行った。猫たちの好みは皆それぞれで、この間死んだ黒猫バギイは「乾しカマスライス」に目がなかったし、実家にいたモモちゃんは、ひたすらカツオが大好物、灰色猫のグレイスは、ほたての缶詰が好みだ。
シナモンの好きなの何だったっけと、思い出せないのに軽くショックを受けながら、猫のえさの棚の前に立ったら、ひとりでに、彼女は牛肉入りのが大好きだったと思い出した。しかしヤバいな、これも何気に認知症の始まりだったりして。
牛肉入りの缶詰って、わりと種類が少ないのだが、新しい銘柄の、きれいな缶のがいくつか出ていて、うれしくなって買いこみながら、シナモンに食べさせてやりたかったなあと、ちょっと残念でもあった。

◇それで、今日、書道をなさる方たちの会で、江戸文学について話したら、その後で立派な花束をいただいた。帰って上の家のキッチンのテーブルに飾ったが、何だか、すべてがシナモンの命日を弔ってくれているようで、ありがたかった。
先日、田舎の実家においていた、小さい仏壇を友人に手伝ってもらって運んで来た。叔母が使っていた、もっと小さいが黒檀かなんかの上等の仏壇は別にあるので、祖父母や叔母たちの位牌はそこにおいてある。だから、こちらは処分しようと思っていたのだが、ふと、キリスト教の祭壇にして(私は無神論者みたいなものだが、それだけに宗教的には神棚仏壇マリア像と、カオスなことになっている)猫たちの写真を飾るのに使えると思ったので、持って来たのだ。シナモンがその祭壇と化した仏壇で命日を迎えた最初の猫になった。

◇ちなみに、その講演だが、90分で江戸文学全体について語るなんて、どうやればいいんだと悶々として、資料がさっぱりできなかった。ぎりぎりで何とかしあがったが、担当者の方は苦労されたことと思う。
「江戸時代を一口で言うと、刀を持って人を切り殺すのが仕事の武士たちが、その刀を振り回しもしないで平和な世の中で公務員やってた時代です」「今の自衛隊の皆さんのようなもので、武器を持って、いつでも戦えるようにしていながら、それをしないで、平和を守ったのは立派なことです」「しかし、そうやって平和が続けば当然武士より商人の方が強くなって、三度の改革でも、その流れは押しとめられない」「商業が発達し、町人の力が強まるのは市民革命後の近代社会ですが、それ以前の中世封建制のしくみも残っている。だから、中世と近代の間ということで、近世と呼ばれることになった」から始まって、平賀源内の「なえまらいんいつでん」の話までしてきた。いいのかな。

さて、明日はまた朝から大工さんが来るので、早く寝ておかないと。

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カツジ猫