「グラディエーター」の字幕
隣町のシネコンで、「グラディエーター」のリバイバル上映を見て来ました。
映画館の大画面で見ることは多分死ぬまでもうないと思っていたので、大変うれしかったです。
ただ、ほとんど観客がいなかったのが心配です。24日までの上映予定のはずですが、途中で打ち切りになったりしないよなあ。
前にも言いましたように、映画館の大画面で見ないと絶対に真価がわからない作品です。
もう、私にだまされたと思って、ぜひとも早めに見に行かれて下さい。
…と書いてから数日。今日また見て来ました。少しは人が入ってたので、ちょっと安心したけれど、これって水曜日は安いからかしらん。
ところで、この映画、公開時の字幕が実はめちゃくちゃで、ドラマ部分もしっかりできている作品なのに、そのドラマの根底が実はぶちこわしになるような字幕なんですよね。
いろいろあるけど、もう一つだけ、知っておいていただきたいこと。
主人公はローマの将軍ですけど、属領のスペイン出身で、ローマを見たことも行ったこともありません!!!!!
敬愛する皇帝を通して彼はローマの文化を知り、深く信じて、そのために戦っています。
だから最低の奴隷になり剣闘士に身を落として、初めて目にした現実のローマは、優れた文化的な場所でも何でもなく、コロセウムで人殺しを楽しむ愚かで野蛮な都だったという、これがこの映画のものすごい悲劇だし、現代に通じる点でもあります。
それをまったく理解していなかったらしい字幕は、彼がまるですでにローマにいたことがあるかのような訳にしてしまってますから、映画の中味も俳優の名演技もぶち壊してしまっています。
まあ、その他にもいっぱい誤訳はあって、主人公が悪役のバカ皇帝(父を殺して位についた皇太子)を、絶対「陛下(シーザー)」と呼ばないで、「殿下(ハイネス)」としか呼ばないのも無視して、しゃあしゃあと「陛下」と訳してたのなんかも、いいかげんひどいですけどね。
この方(戸田奈津子さん)、字幕の世界の大御所ですけど、当時はよっぽど忙しかったのか、担当する映画の字幕はどれもこれも破壊的にひどい誤訳だらけでした。
今回リバイバル上映見たら、さすがに「殿下」は訂正されてたし、最後に字幕担当者の名が出なかったのは、ちょっと笑いましたけどね。
DVDでもあちこち訂正されていましたけど、一番肝心の「おまえはローマをまだ知らない」は「最近のローマ」のままになっていて、大御所に遠慮したのか知りませんけど、ほんとにひどいと思います。
とりあえず、主人公は、ローマを見ないまま「野蛮な世界の中でローマは光だ」と信じていたことだけは、わかって下さって、ごらんになってほしいです。あ、私の「グラディエーター小説」では、しっかりそこは強調してますが(笑)。