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「水の王子」通信(101)

日本神話の中では、ホオリとホデリの兄弟の話は、海幸彦と山幸彦の話として、童話などでもよく知られており、「わだつみのいろこのみや」なんて青木繁の絵のテーマにもなってるぐらい有名です。天皇家の先祖につながる子どもを生む妻を持つという、大きな役割まであります。

40年間、「村に」の下書きを書いては消していたころ、ウズメとサグメをコノハナサクヤ姉妹にして、ヒルコとハヤオをホオリとホデリに重ねてしまえば、だいぶ登場人物を整理できるななどと画策していたこともありました。

どちらも結局やめました。このイラストはホオリのつもりなんですが、彼もホデリも私の中ではこういうイメージで、かわいいけれど、ヒルコやハヤオのような複雑さや妖しさや激しさはないんじゃないかなという感じを、どうしても消せなかった。

ホオリもホデリも、とても無邪気でかわいい。ヨモツクニのツクヨミが、二人を利用しようとしてなかなかできなかったのも、結局は二人の無邪気さと清らかさだったのだと思う。彼らを成長させ、暴力や服従を愛するしょうもない大衆にして行くには、キノマタという触媒が必要だったのでしょう。詳しいことは知らんけど(笑)。

「村に」の恐さは何よりも、能力や武力や知力では圧倒的にまさる、タカマガハラの戦士たちを初めとした多くのすぐれた村人が、その良識や余裕ゆえに、キノマタやホオリたちの跳梁を許してしまったことです。まったく適菜収さんがおっしゃったように「それでもバカとは戦え」という教訓は、乱暴なようで限りなく真実です。

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カツジ猫