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「水の王子」通信(102)

これはホオリの兄で、いわゆる海幸彦のホデリ。弟に意地悪して結局負けてしまうので、神話では悪役っぽいところもありますが、私に言わせれば、おっちょこちょいの弟の方がすべて悪いので、彼は気の毒な気しかしません(笑)。いつものように偶然の出来ですが、この二人のイラストは、どちらの感じもよく出ているので、一応満足しています。

アホで図太い弟のホオリと、繊細で激しい気性のホデリ。私の物語では、この二人はヒルコたちより少し幼い子どもとして登場しますが、やがてキノマタに引っ張られるように成長して若者になり、彼の取り巻きの中心になって、たがいに対立しあうという、シェイクスピアも顔負けのアホな大衆の代表となってしまいます。

でも、そうなってもヒルコもハヤオも、二人を憎んでも嫌ってもいないし、「いい子たちなんだよねー」という感覚です。タカマガハラの若者たちも、彼らを警戒し対決しながら、まるでバカにしまくっている。アメノサグメが叱りつけるように、その油断は危険でもあるのですが。

でも私も彼らをさげすんだり見限ったりはできない。善意の大衆なんて、絶対にもうこんなもんだと思ってるから。映画「キャバレー」の名場面で、ナチスが台頭する時期の郊外の美しいカフェで、美少年が歌うのに皆が唱和して行く、あの場面を思い出しても、世の中ってそんなもんです。あそこでただ一人歌わない、さえないおじさんの姿がいつも目にやきついているのですけど。

なお、キノマタが二人に渡す強力な破壊アイテム、潮満珠と潮干珠は、ほんとは海の王様が二つともホオリに与えて、それを使って彼はホデリを屈服させるんですよねー、神話では。でも私の物語は、二人が一つずつ持っていて、相手を抑制しようとした結果、村の破壊につながるという展開になってます。ハヤオとヒルコが言うように、バカがたがいにこういう武器で脅かし合っていたら、どうせこんなことにしかならないんですよ、現実でも。

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カツジ猫