「水の王子」通信(103)
神話ではタケミカヅチは、ナカツクニがタカマガハラに併合されるとき、オオクニヌシの息子タケミナカタを戦って負かして、タカマガハラの勝利に貢献しています。剣や雷の化身とか、イザナギがハヤオを斬り殺したときの血から生まれたとか、とにかく武闘派の神さまで、そこそこ有名で人気もあるし、祀られる神社も多いはずです。特に残酷とかいう話もなく、軍神、武神という感じで好感度も高いのでしょう。
私の物語ではちょっとしか出ませんが、続編やサイドストーリーで、アメノワカヒコのかつての活躍や冒険を描くときには、この神は若い将軍ワカヒコの副官として語り手やら何やらで、しっかり登場する予定。ただし、いつ書くかはまったくの未定なんですが(笑)。
自分の話を書くときの彼の外見のイメージとしては、特に理由もなくとっさに映画「トロイ」のアキレスの副官エウドロス(スクロールすると下の方に出ます)を思い浮かべていました。このイラストはどこか別の絵を使ったのですが、だいたいこういう雰囲気でいいと思っています。
冷静沈着で常にタカマガハラに忠実で、一見ふわふわしたワカヒコや、不安定で弱々しいキギスやら、副官としては不安この上ないはずの存在でも、誠心誠意仕えてつくして、ナカツクニとの関係でも、多分コトシロヌシなんかとは、良好な関係を構築している。実に理想的な人材ですね。大学に勤めていたときの事務方のさまざまな人たちを、つい思い出したりなんかして。とても有能で良心的で、大学改革の中で心を病んだ方もおられた。タケミカヅチがそんなことにならないような、タカマガハラの未来をけっこう心から私は祈っています。
アマテラスも仕えたらあれでなかなか独断専行も多くてふり回されそうだし、次世代のタカヒコやタカヒメと来たらこれまたなかなか、ややこしそうだし。きっと彼の苦労はつきないでしょう。はー。トリフネと言い、彼と言い、こういう仕事人間は登場しないでも作品を裏で支えてくれている気がして、作者としては非常に頼もしいです。
ちなみに、ジロドウの素敵でおしゃれな反戦劇「トロイ戦争は起こらない」で、好戦的な王やバカな議員や学者と対抗して、必死に平和を守ろうと奮闘するのが、軍人で英雄のヘクトールなのは、最初テレビで見たとき、印象的でしたねー。