「水の王子」通信（５９）

いやもうつくづく、弱音は早めに吐くべきだよねえ。

先日もぼやいた最終校正チェックの話ですけど、実はそれに使う映像の画面が灰色で字は小さく、３０分も作業していると、もう目はちらちら頭はずきずき、吐き気や目まいに襲われるというぐらい、見にくかったのです。

それでも無理して何とかやっていたのですが、たまたま訂正部分の連絡が行き違ったりすると、該当箇所をその灰色の霧の中から必死でさがさなくてはならず、元のファイル（こっちは横書き）のと照らし合わせていちいち確認していると、もう脳みそも心もすりへってずたずたになり、ベッドに倒れ込んで食事もできずに何時間も爆睡する、みたいな日々がずっと続いていました。

もういっそ出版をあきらめようか、数年延ばそうかと真剣に考えたぐらい。

それでも何とか終わりそうになった数日前、しかしこんなに見にくくては、そもそも読者も読まないんじゃないかと不安になって、担当者に画面の色その他を確認したら、なな何と！　画面の背景を白くするボタンも文字の大きさを変更するボタンもちゃんとあったのでした！

さっそく背景を白くして、文字を大きくしたら、もう見やすいというか何というか、白内障の手術をした後の人はきっとこんな気分かと、いやそれ以上かもしれない。肩の力が抜けて、肺が大きくふくらんで、車のトランクに閉じ込められてたのが高原の草原に出たかのように呼吸が一気に楽になった。目も周辺の筋肉に何の力も入れなくていい。文字がするする頭に入って来ます。

ああバカだったバカだった、何でもっと早くに「見えにくい」と弱音を吐いて文句言わなかったんだろ。この数ヶ月を無駄にしたかもしれない。重要な時期なのに。

まあ過ぎたことはしかたがない、とはあはあ息を吐きながら、最初からまた見直すことにしたのですが。

何となく見当がつくのは、こうやって見やすくなった画面で見直したら、あの灰色の霧の中で手探りでチェックしていたときには見逃し、見落としていたまちがいが、きっとざくざく見つかるんじゃないのかなあ。

しょうがない。とにかく前進するだけです。

しかし、こうなると電子書籍の出版がまた遅れそうで。

実はこのへんのイラストは、もうネタばれぎりぎりすぎて、電子書籍の出版以後じゃないと公開できないかな、と思ってたんですが、もういいや、公開しちゃお。一番下の絵はなまめかしすぎますけど、想像をたくましくしてごらん下さい（笑）。

そもそもイラストをこんなに描きまくったというのも、自分でも気づかなかったけど、こういうスケッチや色塗りは目も心も疲れなかったから、息抜きにもなってたんですよね。はあああああ。かえすがえす、何て私はバカだったんだ！