1. TOP
  2. 岬のたき火
  3. ミーハー精神
  4. 「水の王子」通信(73)

「水の王子」通信(73)

「水の王子・村に」を書くとき、かなり長いことネックになっていたのは、コノハナサクヤとイワナガヒメ、美女と醜女の姉妹でした。
この有名だけど、いろいろムカつく神話や伝承の設定を、ごまかさないで、逆手にとって、より強烈で印象に残る姉妹像を築くにはどうしたらいいんだろうか。

途方もないけど、一時期は登場人物をなるべく少なくしたかったのもあって、ウズメとサグメが化けてるんだって設定も、真剣に検討してたんですよ!

それも面白そうだったけどあきらめたのは、やはり私はコノハナサクヤをまっとうな美女として正統派の描き方をしたかったのね。健全で、前向きで、明るくもある。よく美人のハンディみたいにくっつけられる愚かさとか意地悪さとか不健康さとかとは、まったく無縁にしておきたかった。

でも完璧で正しいものは、その分平凡で印象も薄くなるのよね。そこをどうするかが難しい。
結局私は、自分の中の二つの要素を彼女に担わせることで特徴を与え、それを徹底的に美化しました。ひとつはこの物語のようにうまく行ってはいないのですが、ファッションやインテリアやガーデニングなどに関する自分のこだわりや、美学です。決して彼女のようにすごい成功はおさめてないのですが、でも自分の生活をある程度は快適にしているこの能力への感謝と今後の研鑽への期待もこめて、彼女を一つの理想像として描きたかった。

もうひとつは、自分の中にずっと存続していたミーハー精神です。詳しくは書かないから作品を読んでいただきたいけど、私の恥部でも弱点でもあり、けれども決して捨てられないし消せないし、生きる力を生むものです。それが私をしっかりさせて、ちゃんと生きる支えにも目安にもなっている。

でも、それがあるから、彼女はどこか不安定でもあります。華やかで元気で優しくて前向きだけど、どこか不健康と紙一重のヘンなところがあるのです。それに気がつく人は作中でもごく一部ですけど、そういう点では彼女は決して正常な多数派じゃない。マイノリティーの異分子です。

この設定が決まったときに、ああ、この作品が書けるかなあと思いました。それまで何度もそんなことはあって、だめだったから、過度な期待はしなかったけど。でもひとつの大きな山は越えたかなとは思いました。

挿絵では彼女はあんまりていねいに描かれていないかもしれないですね。無難な美女って感じで、あまりパワーも感じられない。この絵では、それを少しは表現したいと思いました。健全だけど、どこやら不安定な感じを。初めてまつげを描いたかもしれない(笑)。髪や目の色もいろんな色を少しずつ混ぜてます。

彼女は桜の化身としても伝えられています。それもどこかで連想できるといいのですが、この段階ではまだ私の未熟さでは無理のようです。

Twitter Facebook
カツジ猫