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「水の王子」通信(87)

日本神話でもタカヒコはタカヒメの兄。そしてアメノワカヒコと外見が酷似していたことになっている。私の物語とちがって神話ではアメノワカヒコとは親友だ。ワカヒコの葬儀に参加するためタカマガハラから降りてきたが、ワカヒコの家族や知り合いが瓜二つの彼を見て「ワカヒコがよみがえった」と泣いて喜んだので、「死人と同一視するとは」と激怒してそのへんをたたきこわして、タカマガハラに帰ってしまった。妹のタカヒメが「別人です」と歌を詠んで説明したことになっている。そういう反応や行動からしても、いわゆる男性的で勇ましく激しい性格の神さまだったのだろう。

私の物語では、そういう性格はかけらもなくて、アメノワカヒコにそっくりなだけで、むしろ人のいい、優しい、ちょっと軽めの若い医者である。続編「回復期」では、ますますそれに磨きがかかって、お笑い担当のおっちょこちょいになりかねなくなっている。すみません。しかしもちろん有能な戦士で医師で、タカマガハラの次世代をになう一人でもある。それがこんなんで大丈夫か?と思わせるところはあるが。

外見がそっくりなだけでなく、この軽やかでとりとめのない雰囲気もワカヒコと似ている。ただ本人も苦にしてるように能力はすべてにおいてワカヒコとけたちがいに劣るし、彼のような複雑さも深遠さもない。

で、そんな性格をワカヒコとそっくりの外見でイラストで表現しろって、ただのシロートの私にはいくら何でも荷が勝ちすぎだろ(笑)。まあ、こんなところでお見逃し下さい。

神話とはちがって、彼は生前のワカヒコとはほとんど交際がなかったのですが、彼の亡き後、まちがえられつづけるのに閉口したあげく、続編では開き直って、ワカヒコとまちがえられたまま、あちこちの村や町をめぐって危なっかしい冒険や活躍もしている模様。

ナカツクニの村の若者たち、ニニギやコトシロヌシやタカヒコネはかつての親友ワカヒコと見た目が同じでいろいろちがう彼の存在に、「あいつが悪いわけじゃないけどさあ」「だんだん頭の中で、記憶が塗り替えられてしまいそう」と、少々げんなりしている。そういう点でもいろいろと目が離せない一人ではある(笑)。

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カツジ猫